葡萄とフロック

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葡萄は、グレープのことですよね。フランスなら、「レザン」でしょうか。
葡萄にも、いろんな種類があります。とても覚えきれないほどです。葡萄はもちろんそのまま果物としても食べることがあるでしょう。あるいはまたケーキなどに使ったりも。
葡萄を絞って醸すと、ワインになるのは言うまでもありません。生の葡萄は長く置いてはおけませんが、ワインなら保存しておくこと可能であります。

葡萄と題につく小説に、『青い小さな葡萄』があります。遠藤周作が、1956年に発表した長篇。遠藤周作の出身作とも言えるでしょうか。
『青い小さな葡萄』は、遠藤周作のフランス留学期に題材を得ています。場所は、当時のリヨンになっているのですが。「伊原」という日本人留学生が、深夜営業の酒場でアルバイトをしているとの、設定になっています。

「ああ、ヴァルツの葡萄だ」と彼は叫んだ。「アルデッシュ県だけで採れる葡萄だろう」

これは客の「ハンツ」の科白として。ハンツは、この店で、一番列車の出るのを待つつもり。「伊原」は客のハンツに、皿を出す。バターライスと、チーズと、葡萄とを。その葡萄が、「ヴァルツ」だったのですね。

遠藤周作が1957年に出した長篇に、『海と毒薬』があります。この『海と毒薬』を読んで感動したのが、映画監督の熊井 啓。
熊井 啓は、映画化について遠藤周作の許可を得ています。

「遠藤周作氏に初めてお会いしたのは、昭和四十四年の十一月十五日であった。」

熊井 啓の随筆『遠藤氏の演じたかって役』に、そのように書いてあります。
この時の遠藤周作は「黒い革ジャンパー」を着ていたと、熊井 啓は語っているのですが。
ただ、『海と毒薬』の映画化自体は、難航。映画会社が首をタテに振らない。その理由は、小説の内容が、「暗い、重い、難しい」から。封切までに、17年かかったという。
映画『海と毒薬』の中で、遠藤周作は「コジキ」の役をやりたいと、熊井監督に言ったそうです。が、いろんな事情から実現はしなかったのですが。
葡萄が出てくる小説に、『炎の色』があります。2018年に、フランスの作家、ピエール・ルメートルが発表した長篇。

「シャルルはといえば(中略)軽演劇の女優に、ブドウ粒ほどもある宝石を贈った。」

もしこれがダイヤなら、たぶんお安くはなかったでしょうが。『炎の色』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。

「いつものようにダークグレーのフロックコートを着て、必死に磨いた古靴を履いている。」

これは「レオンス」という人物の着こなしとして。ただし時代背景は、1920年代末になっているのですが。
1920年代のパリに、グレイのフロック・コートがあったことが窺えるでしょう。グレイのフロックも良いものですね。
どなたか現代風のフロックを仕立てて頂けませんでしょうか。

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