風呂敷とプラシュ

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風呂敷は、一枚の布ですよね。たしかに一枚の布ではあるのですが、あるとないとで大違い。物を包むのに、便利です。
しかもどんな物でも包めてしまう便利さがあります。玉手箱でも、ワインでも。
風呂敷はまた、日本文化の象徴でもあるのでしょう。物をむき出しにするのを、羞うのです。

風呂敷が昔の風呂と関係しているのは、言うまでもないでしょう。
中世、貴族の風呂は、主に蒸し風呂で、風呂場専用の帷子を着て、入った。風呂から、あがる時に、帷子を着換えた。その着換える場所に敷いたのが、風呂敷なんだそうですね。
ところで、風呂専用の帷子から着換えたのが、今の「浴衣」なのであります。

風呂敷には、大判もあれば、小判もあります。絹もあれば、木綿もあります。
136センチ四方以上になりますと、大風呂敷。昔の商店の小僧は皆、大風呂敷に商品を包んで、行商に回ったんだという。

風呂敷が出てくる小説に、『其面影』があります。明治三十九年に、二葉亭迷亭が発表した長篇。

「………矢絣の羽織に千代田草履を穿いた女学生風の女が、風呂敷包を重そうに両手に提げ………」

また、『其面影』には、こんな描写も出てきます。

「小夜子は絹フラシのショールの襟を蝶々で留めていたが………」

この「小夜子」は物語の主人公。
さて、「絹フラシ」とは、何でしょう。英語でいう「プラッシュ」plush のことです。明治の頃には、「フラシ天」とも言ったものです。
毛足の長いビロードと言っても、それほど大きな間違いではありません。
今でもプラッシュは、ソファーの覆いにもよく用いられるものです。
十九世紀のシルク・ハットが、多くプラッシュだったのは、いうまでもないでしょう。
どなたかプラッシュで上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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