ビリヤードは、玉撞きのことですよね。昔は「撞玉」とも言ったんだそうですが。
ビリヤードに欠かせないのが、羅紗。ビリヤード台に緑の羅紗がないことには、気分が出ません。
「………日本橋の某倶楽部の階下のビリヤード室で能く玉を突いてゐる、某会社の葉村幸太郎とて………」
二葉亭四迷が、明治三十九年に発表した『其面影』に、そのような一節が出てきます。明治三十年代には、ビリヤードが流行ったのでしょうね。
1902年に、ヘルマン・ヘッセが書いた短篇に、『ビリヤードの話』があります。ビリヤードの名人が出てくるので、『ビリヤードの話』なのでしょう。
「彼のキューは逸品だった。太めだが軽く、わずか二六0グラムで、三色のアメリカ産の木で造られていた。」
これは「オスカー・アントン・レガーゲル」というビリヤード名人の持ち物として。
ビリヤードが出てくる小説に、『セザール・ビロトー』があります。1837年に、バルザックが発表した物語。
「みなさんも大通りやカフェで彼がだらしない格好で破目をはずしたり、ビリヤードをしているのを見かけることがあるかもしれません。」
これは「クラパロン」という人物について。
ビリヤードは十九世紀のフランスから、その流行がはじまったとも考えられているのですが。
また、『セザール・ビロトー』には、こんな描写も出てきます。
「ピケ織綿布の白いチョッキはきちんとボタンがかけられ………」
これは「セザール・ビロトー」の着こなしとして。
「ピケ」piqué 畝織り綿布のことです。帽子の素材だけでなく、長く正装用チョッキの材質とされてきました。
どなたか白ピケのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。