ピースは、平和のことですよね。
peace と書いて「ピース」と訓みます。平和の反対が、戦争。平和に優るものはありません。
トルストイの小説に『戦争と平和』があるのは、ご存じでしょう。1869年の執筆。長篇。登場人物の数だけでも、559人を越えるというのですから、大長篇というべきでしょう。
まあ、それほどに平和を保つのは、大切なことなのでしょうね。
白い鳩が平和の象徴であるのは、言うまでもありません。これは「ノアの方舟」にまで遡るのですから、古い。
ノアが方舟を作って、大洪水から避難する。やがてオリイヴの小枝をくわえた白鳩が飛んできて。平和が戻ったことを教えてくれたわけですね。
そういえば、「プリンス・オブ・ピース」は、イエス・キリストの別名にもなるんだとか。
平和を願っていた一人に、シェイクスピアがいます。シェイクスピアの戯曲には、しばしば「平和」の言葉が出てきますので。
たとえばシェイクスピアが1606年頃に書いた『コリオレイナス』の中に。
「やめろ、オーフィディアス、平和を乱してはならぬ。」
また、『ハムレット』の中でも。
「けんか口論にまきこまれぬよう用心せねばならぬが、」
これはポローニアスが息子のレイアティーズに忠告を与えている場面。ここでもピースの言葉が用いられています。
このポローニアスの科白は長い。えんえんと続くのですが。その中に。
「財布の許すかぎり、身のまわりには金をかけるがいい。といってけばけばしく飾りたててはいかん、凝るのはいいが華美は禁物。」
この科白、現代の紳士服店で使えませんでしょうか。
「戦争に備えておくことは、最も有効な平和維持の手段の一つである。」
1790年1月8日、アメリカの初代大統領、ジョージ・ワシントンは、議会でこのように述べています。
ピースが出てくる研究書に、『ポケットと人の文化史』があります。ハンナ・カールソン著、岸川由美訳で、2023年に出ています。
ポケットに限っての服飾史は珍しいかも知れません。この中に。
「サファリスーツは日曜のブランチやギャラリーのオープニングセレモニーなどの、「のんびりしたおでかけ」にすすめられた。」
そんな文章が出てきます。ここでも「のんびりとした」の原文は、「ピースフル」になっています。
おしゃれもまた平和でなくては、充分に活かせられないのでしょう。
また、『ポケットと人の文化史』には、こんな説明も出てきます。
「フラップを中にしまったダブル・ビーサム・ポケットのほうが、ボタンのあるフラップとひだつきパッチポケットよりフォーマルとされる理由は知らないだろうが、」
ここでの「ダブル・ビーサム・ポケット」は、「ビーザム・ポケット」のことかと思われます。
「ビーザム」besom は、「竹箒」のこと。竹箒の小枝が二本並んでいるように見えるので、「ビーザム・ポケット」。
よくディナー・ジャケットの両側にみられるポケットのことです。
室内では雨が降らないので、雨蓋が省略されるので。
どなたかビーザム・ポケットの美しいディナー・ジャケットを仕立てて頂けませんでしょうか。