キャンディは、砂糖菓子のことですよね。
キャンディはキャラメルとも似ていなくもありません。でも、キャラメルとキャンディは、また、別のもの。
キャラメルは噛んでたべる。キャンディはなめて食べる。
たとえば、ドロップス。ドロップスもキャンディのひとつなのでしょう。「むかし、「サクマ・ドロップス」というのがあった記憶があります。涙の形をしているので、ドロップスなのでしょうか。
口のなかに入れておくと、いつの間にか消えているものです。
「その下にドロップが入つてゐますから、それをおあがんなさゐ。ね、いい児、ドロップもおいしひのよ。」
明治四十三年に、志賀直哉が発表した短篇『網走まで』に、そんな会話が出てきます。
これは列車のなかでぐずる男の子に対するお母さんの言葉として。
物語の主人公はたまたま、この母子の前の席に乗りあわせて。
少なくとも明治の時代にもすでにドロップスがあったことが、窺えるでしょう。
キャンディはなにもドロップスに限ったことではありません。実にいろんな種類のキャンディがあります。
「下戸には、かすていら、ぼうる、かるめひる、あるへい糖、こんぺい糖などをもてなし、」
寛永二年(1625年)に書かれた『太閤記』に、そのような一節が出ています。
豊臣秀吉の頃から、キャンディがあったものと思われます。
ここでの「あるへい糖」も「こんぺい糖」も、キャンディのひとつですからね。
あるへい糖は、「有平糖」とも書いたものです。平たく伸ばしたキャンディのこと。
有平糖はずいぶんと流行ったものらしく。江戸時代には庶民の食べものでもあったようです。
井原西鶴の『好色一代女』にも、「あるへいたう」として出ています。
🎵ガッタンコッコ ガッタンコ お菓子の汽車が走ります 長い煙突 あるへい糖 つながる函は チョコレイト
西條八十が、大正九年に発表した童謡『お菓子の汽車』に、そんな歌詞があります。
大正時代には「あるへい糖」も一般的だったのでしょうね。
これに曲をつけたのが、山田耕筰。たしか、浅井ふさ子が歌っていたようにも想うのですが。
キャンディが出てくる小説に、『白鯨』があります。
1851年に、ハーマン・メルヴィルが発表した名作。
『白鯨』は何度も映画化されていますか、ご覧になったお方も多いでしょう。
「その他の海のキャンディやマカロニを海鳥がせっせとつばむ。」
これはセミ鯨の背中に残った食料を、鳥が食べる様子について。
また、『白鯨』には、こんな描写も出てきます。
「だが、いまのばあい、クイークェグはスコットランド風のいでたちで、 ー つまりスカートとソックスという格好で ー
すくなくともわたしの目には、颯爽と見えた。」
ここでの「スカート」は、たぶん「キルト」kilt のことかと思われます。
キルトはもともとスコットランドの民族衣裳。
インドのサリーと同じくいちー枚の布を身体に巻きつけて完成。
それが後の時代に、上下が独立したものです。
どなたか街歩き用のキルトを仕立てて頂けませんでしょうか。