ナオミとフラノ

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ナオミというのは、佳い名前ですね。第一、響きがよろしい。それにちょっと蠱惑的でもあって。
「ナオミ」に蠱惑的な印象を加えたのは、たぶん谷崎潤一郎でしょう。昔、『痴人の愛』という小説がありました。この女主人公が、ナオミ。
男のほうは、河合。平々凡々を絵に描いたような男なんですが。偶然、浅草のカフェ「ダイアモンド」で知り合って、「ナオミ」の名前に惹かれて。それからはもう何から何まで、河合はナオミのいう通りに。
谷崎潤一郎『痴人の愛』は、名作。谷崎自身は、「ほんとうにあった話」と言っていますが。それもまた、創作の一部なのかも知れませんが。
それはともかく、『痴人の愛』は何度も映画化されています。このナオミ役が立派に演じきれたなら、名女優間違いなしでしょう。それくらいナオミは蠱惑的な女なのです。
『痴人の愛』のなかに、レモン・スカッシュを頼む場面が出てきます。大正十三年ころ、レモン・スカッシュがあったんですね。もっとも「レモンスクオツシユ」と書いていますが。
レモン・スカッシュではなくてレモネードが出てくる小説に、『アララテのアプルビイ』が。1941年に、マイクル・イネスが発表した物語。
マイクル・イネスは、筆名。本名は、ジョン・イネス・マッキントッシュ・スチュアート。スコットランド、エジンバラに生まれて、オックスフォード大学で学び、その後、英文学教授となった人物。そのイネスが、「ジョン・アプルビイ物」のミステリを書くんですから、面白いんですね。

キタリー夫人はレモネードを啜っていたストローを口から離した。」

ミセス・ダイアナ・キタリーは、若いご婦人という設定。海辺のカフェで、友人たちとおしゃべりを愉しんでいるさなか。また、こんな描写も。

「その下には白いフランネルのズボンを穿いた足が見える。」

時代背景としては、1940年ころでしょうか。
いいなあ。ホワイト・フランネルズ。フラノを穿いて、ナオミの名前の似合いそうな女性を探しに行くとしましょうか。

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