フィルトルとフランネル

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

フィルトルという道具があるんだそうですね。珈琲を淹れるための道具。陶器とか金属などでできていて、これをカップの上に。濾紙と珈琲豆とを入れて、湯を注ぐ。と、カップに珈琲が落ちてくるわけで。
フィルトル filtre 。つまりは、英語のフィルターであります。戦前までのフランスではたいていこのフィルトルを使って、珈琲を淹れたんだそうですね。
むかし、小島政二郎 ( こじま まさじろう ) という作家がいいました。食通で、『食いしん坊』の著書もあるほど。美食三昧で、百歳まで長命だったお幸せなお方です。
小島政二郎が当然のように珈琲が好きで。人から話を聞いて、どうしても「フィルトル珈琲」が飲みたくなって。洋行する友だちの誰彼に、フィルトルを買ってくるように、頼んだり。でも、手には入らなくて。フィルトル、フィルトル…………。夢に見るくらいになって。
ところがある日、小島政二郎のもとに、「フィルトル」が。送り主は、大久保恒次。大久保恒二は、趣味人。以前、『あまカラ』という食通雑誌の表紙を担当していた人物。その大久保恒二から念願の「フィルトル」が。
小島政二郎はさっそく「フィルトル」で珈琲を淹れて、美味い、美味い。その後、大久保恒二から連絡があって、「蒸し器はいかがでした?」小島政二郎が「フィルトル」と思い込んだ代物、それは「蒸し器」で。たとえば食べ忘れた菓子があったとして。その小型の蒸し器に入れて、茶釜の蓋を取って、1947年のチャップリン映画。チャップリンがフランスの洒落者に扮する物語。この中にチャップリンがカフェで珈琲を飲む場面があって。やはり「フィルトル珈琲」を飲んでいます。
でも、『殺人狂時代」ほど洒落者を典型的に描いた映画も他にないでしょう。英國式の、クラッシックな着こなしがたくさん出てきます。
ことに、パール・グレイのフランネルの着こなしは、思わずため息がもれるほどです。グレイ・フランネルのスーツを着て、とびきり美味しい珈琲を飲みに行きたいものですね。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone