活動写真とカメオ

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活動写真は、今の映画のことですよね。
昔は映画のことを「活動写真」と呼んだんだそうです。英語の「モーション・ピクチュア」をそのまま日本語に置き換えて、「活動写真」。明治語のひとつとも言えるのでしょうか。
明治期の活動写真はまず例外なく、無声映画。ですから「弁士」がついたわけですね。俗に、「活弁」と言ったものであります。活弁からやがて有名になったお方に、徳川夢声がいるのは、ご存じの通りでしょう。

「菊人形は御免だ。菊人形を見る位なら活動冩眞を見に行きます」

夏目漱石が明治四十一年に発表した『三四郎』に、そんな科白が出てきます。これは菊人形に誘われた三四郎の答えとして。

活動写真、いや映画で忘れてならないものに、『羅生門』があります。昭和二十五年の、黒澤 明監督の映画。三船敏郎主演。京 マチ子、森 雅之など。
『羅生門』は日本だけでなく、海外でも高く評価された映画でもあります。映画『羅生門』は、芥川龍之介の小説『羅生門』に想を得ているものです。が、実際の内容は、やはり芥川龍之介の短篇『藪の中』にヒントを得ています。
余談ですが、今も用いられる「藪の中」の表現は、この芥川の小説から生まれたものなのですね。

「………これは確か多襄丸と云ふ、名高い盗人でございます。」

芥川龍之介著『藪の中』に、そんな一節が出てきます。これは事件を見た「下役人」の証言。この「多襄丸」に扮するのが、三船敏郎なのです。
それはともかく事件の証人が皆違う話を。それが主題になった物語なのです。

芥川龍之介は『藪の中』を、アンブローズ・ビアスの『月明かりの道』を参考にしたのではないかと、考えられています。

「アムブロオズ・ビイアスは毛色の変つた作家である。」

芥川龍之介は大正十一年に発表した随筆『点心』の中で、そのように書いています。
これが日本におけるアンブローズ・ビアスの、はじめての紹介なのです。少なくとも大正のはじめに、芥川龍之介が原文でビアスを読んでいたのは、間違いないでしょう。また、芥川龍之介の『侏儒の言葉』も、ビアスの代表作『悪魔の辞典』との共通性を指摘する考えもあるようです。

馬の横顔が空を背にした影絵となって、カメオのように、くっきりした輪郭を見せている。」

ビアスが、1889年に発表した『宙を飛ぶ騎馬兵』にそのような文章が出てきます。
「カメオ」c am e o は「浮き彫り」のこと。アクセサリイによく使われますね。大きな巻貝などを台にしての、彫刻。貝の層によって色が異なったりして、美しいものです。
また、「カメオ出演」とも。たとえば映画監督などが、素知らぬ顔で通行人を演じてみたり。ヒッチコックがお得意だったですね。
それはともかく、どなたかカメオのカフ・リンクスを作って頂けませんでしょうか。

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