サラダと毛皮

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サラダはよく食べますよね。なにかしら野菜があれば、とりあえずサラダらしきものが作れる。あとはもうドレッシングさえあれば。
サラダ salad のはじまりは、ラテン語の「サル」 sal なんだとか。「塩」のこと。たぶん昔は野菜を塩味で食べていたんでしょうね。フランスでも、「サラド」salade 。そういえば「サラド」を歌ったシャンソンがありましたね。
フランスには「パニエ」があって。「サラダ籠」とでも言えば良いのか。パニエの中に、洗って、切った野菜を入れまして。ベランダなどで、運動選手よろしく振り回す。で、サラダの水切りをするんですね。
このパニエでの水切りは、たいてい旦那さまがやることになっているんだとか。
ところでサラダには、なにを入れるのか。たとえば、セロリ。セロリを入れるのか、入れないのか。セロリが大好きな人もいれば、そうでもない人もいたりして。
セロリは昔、「オランダみつば」とも言ったらしい。はるか遠い時代に、オランダから伝えられたので。これは日本ばかりではなくて。イギリスもまた、セロリはオランダを通して入ってきたという。
セロリの出てくる物語に、『あめりか物語』が。『あめりか物語』は、もちろん永井荷風ですよね。

「ローストビーフかさらずばローストポークと馬鈴薯。クラムベリー、ソースにセレリー。」

ここでの「セレリー」は、たぶんセロリのことでしょう。これは1910年ころの、NYでの食事風景。ブロードウェイのあるクラブでの様子。従業員が仕事前に夕食。それを荷風が眺めている。

「ほとんど門並みにレディース・テイラー( 女物仕立て所 ) 、または印度渡来のパルミスト (手相判断 ) ……」

当時のブロードウェイ四十二番街を、こんなふうに活写しています。また、こんな描写も。

「高帽に毛裏付きの外套と手袋に洋杖……」

これは突然、クラブを訪れた、ふたりの警官の姿。おそらく毛皮裏のコートなのでしょうね。
毛皮裏ではありませんが。とりあえずコートを着て、サラダを食べに行くとしましょうか。

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