有楽町を読み込んだ流行歌に、『有楽町で会いましょう』がありますよね。
1957年の、歌。フランク永井が歌って、拍手喝采。
🎵 あなたを待てば 雨が降る 濡れて来ぬかと 気にかかる
とはじまるんですね。作詞、佐伯孝夫 作曲、吉田 正。昭和三十二年の歌。でも、歌詞を見ると、文語調、五七調。それでヒットするんですから、文語調、五七調は、日本人の奥深くに棲みついているのかも知れませんね。
『有楽町で会いましょう』は、実はCMソング。有楽町に「そごう百貨店」ができるので、それにさきがけてのコマーシャル・それがヒットしたんですから、快挙。
戦後間もなくは、俗に「らくちょう」などと呼ばれこともあったそうですね。
落丁ではないのですが。今、読んでいる本に活字の欠けがあります。三島由紀夫著『女神』。新潮文庫。平成八年。三十八刷。
「一はダブダブのパジャマを着て………」
「一 ( はじめ ) 」とは、天才画家の斑鳩 一 という設定。なんですが、「一」のこの部分の活字だけが、「-」になっている。短い「一」。もちろん「一」だろうと簡単に想像できることなんですが。たまたまその時、活字「一」のご機嫌が悪かったのでしょう。
三島由紀夫著『女神』は初期作品。この中に。
「誕生石のネクタイ・ピンをつけた渋いネクタイに、黒の上着と縞ズボン……」
これは主人公、朝子のお父さんの着こなし。
ネクタイ・ピンは十九世紀の紳士にとって、必要不可欠のアクセサリーでした。アスコット・クラヴァットを結んだ時。最後の両端を細く、長いピンで留めたからです。