有馬とアロハ

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有馬は佳き所ですよね。とにかく六甲山ですから、涼しい。かてて加えて温泉場。ゆっくりくつろぐに最適の場所でありましょう。
有馬は場所の名前でもあり、人の名前でもあります。たとえば、有馬朗人。もちろん、「ありま あきと」と訓むわけですが。有馬朗人は、本名。東大の教授でもあり、俳人でも。なぜかは知りませんが、東大で、俳人で、というお方、少なくないようですね。有馬朗人の句に。

黒ビール 白夜の光 すかし飲む

というのがあります。有馬朗人は、海外生活の長かった人物でもありますから、実体験の句なのでしょう。一度、白夜のもとで黒ビールを飲みたいものであります。
有馬朗人のはるか先輩の人に、蓼太がいます。大島蓼太。江戸期の俳諧師。この蓼太の句に。

蓬生や 手ぬぐひ懸けて 竹夫人

蓼太はほんとうに竹夫人を使ったようで、いくつか「竹夫人」の句を詠んでもいます。竹夫人と書いて、「ちくふじん」。
竹夫人はごく簡単に言って、竹で編んだ細長い、籠。さらに古くは、抱籠。暑い夜に抱いて寝るから、竹夫人。今の時代の抱き枕の竹版と思えば、それほど遠くはないでしょう。
青竹で編んで、中は空洞。抱く、冷たい。青竹の薫りもして、いつしかすやすやとお眠り遊ばす仕掛けだったです。
明治から大正にかけては一般的に用いられたようです。が、昭和になってからは珍しいものになってしまったらしい。昭和十八年に、井上友一郎が書いた小説に、『竹夫人』があります。この物語の主人公は、竹夫人を使ってみる。ただし、物語の背景は、その時代の中国になっているのですが。

「薄暗がりの蚊帳を排して、そのヒヤリとした竹夫人がわたしの寝床に転がってきた。」

そんな風に書いています。井上友一郎といえば、『銀座二十四帖』でしょうか。この中に。

「 コニイは、白いアロハの着流しで………」。

「コニイ」は、愛称。銀座で有名な花売り男という設定。これはたぶん、白地に柄の、アロハ・シャツなのでしょう。
昼はアロハ。夜は、竹夫人というところでしょうか。

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