シークヮーサーは人気あるフルーツですよね。シークヮーサーはまず第一に、ジュースとして。それから、「シークヮーサー割り」だとか。焼酎にシークヮーサーの果汁を加えたりするわけですね。
シークヮーサーをはじめとして、柑橘系果実は南の国がお好きなようで。たとえばシークヮーサーは、沖縄に多いフルーツであるらしい。なにごとも気候風土はうまくしたもので、シークヮーサーは、芭蕉布に欠かせないものなんだそうですね。芭蕉の葉から繊維を取り出して、織る。これが、沖縄名産の芭蕉布。でも、織りあげたばかりの芭蕉布は堅いので、シークヮーサーの汁で鞣す。鞣すと言っていいのかどうか、しなやかにする秘密兵器なんだそうです。
沖縄を愛し、シークヮーサーを愛したのが、團 伊玖磨。「愛し」と言って良いのかどうか、『パイプのけむり』に何度か出てくるのは、間違いありません。
「多分沖縄でシークヮーサーと呼ぶライムのようなものであろう…………」。
團 伊玖磨は美食家でもありました。少なくとも食すことにおいて、積極果敢であったのは、間違いないでしょう。とにかく、「ビーヴァー・スープ」の経験もあるわけですから。
「同じノールウェイのオスロのレストランで、海狸のスープと馴鹿の壺煮を食べていた。」
「海狸」には「ビーヴァー」の、「馴鹿」には「となかい」のルビがふってあります。それはともかく、團 伊玖磨が「ビーヴァー・スープ」を召しあがったのは、疑いのないところでありましょう。
ビーヴァーは水陸両棲の、小動物。十八世紀には紳士用の「ビーヴァー・ハット」の材料となったものです。
それがあまりにも「ビーヴァー・ハット」を作り過ぎて。ビーヴァーが居なくなってしまった。で、その代用に、絹でビーヴァー風に仕上げたのが、「シルク・ハット」のはじまりなのです。