サミーとサフォーク・ジャケット

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サミーはわりあい多い名前ですよね。サミー Summy は、「サミュエル」の愛称でもあって、よく用いられるのでしょう。
たとえば、サミー・デイヴィス・ジュニアだとか。あるいはまた、サミー・カーンだとか。サミー・カーンは往年の作詞家ですね。今、ギタリストのスティーヴ・カーンがいますが、ステーヴ・カーンは、サミー・カーンのご子息。
サミー・カーンは、1913年にNYの、ロウワー・イーストサイドに生まれています。ロウワー・イーストサイドはあまり富豪は住まない場所なんだとか。
あるパーティーで。サミー・カーンと、コール・ポーターが偶然に出会って。コール・ポーターがサミー・カーンに言った。
「サミー、君に会いたかった。君が、羨ましい。君こそ、ほんとうの出世だから…………」
コール・ポーターはどちらかといえば富豪の家に生まれているので。まあ、ものは考え様なのでしょうが。
サミー・カーンは美しい詞をたくさん書いています。ひとつの例を挙げるなら、『イッツ・ビーン・ア・ロングタイム』。もし日本語にするなら、「ほんとうにお久しぶりね」といったところでしょうか。
『イッツ・ビーン・ア・ロングタイム』は、1945年に発表されて、たちまちヒットチャート第一位になっています。これは帰還兵の夫を迎える妻の歌だったから。当時の世相にぴったりだったのですね。その拍手喝采を受けて、今でもジャズのスタンダード・ナンバーになっています。
男女を含めて、『イッツ・ビーン・ア・ロングタイム』を歌ったことのないジャズ・シンガーはいないほどに。日本でも松尾和子が歌っています。松尾和子の『久しぶりね』もまた、絶品であります。
1945年に発表されたミステリに、『フォックス家の殺人』があります。エラリー・クイーンの作。この中に。

「エプロンの上にベルトのついたノーフォーク・ジャケットをむぞうさに引っかけていたし…………」。

これは、ローガンという男の着こなし。「ノーフォーク・ジャケット」はよく使われる言葉ですが。これに似たものに、「サフォーク・ジャケット」Suffolk jacket があります。ノーフォーク・ジャケットをやや簡略にした上着のこと。私は勝手に、「ノーフォークの手前」というシャレではないかと考えているのですが。
サフォーク・ジャケットを着て。『イッツ・ビーン・ア・ロングタイム』のレコードを探しに行きたいものですね。

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