フォックスとブロード

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フォックスは、狐のことですよね。狐はずいぶん賢い動物なんだとか。少なくとも人間は狐のことを、「ずる賢い」と思っているフシがあります。
あの『イソップ童話』にも狐の話が出てきます。というよりも、『イソップ童話』の中でいちばんよく知られた物語であるかも知れませんが。それは、『きつねとぶどう』。

ある暑い日のこと。きつねが歩いていると、美味しいそうなぶどうがたわわに実っている。きつねはとてものどが渇いていたので、しめしめと思いました。ただ、高いところになっているので、きつねはジャンプ。でも、かすかにぶどうにとどかない。もういちど、強くジャンプ。やはり、ほんのわずかとどかない。三度目に、ジャンプ。これも、とどきませんでした。それで、きつねは言いました。「あれは、すっぱいぶどうだ。」

この『きつねとぶどう』の物語から、「すっぱいぶどう」の言いまわしが生まれたという。もちろんその意味は、「負け惜しみ」であります。
中世の英國では狐は、害獣だと考えられていました。田畑を荒らす悪い奴だったのです。では、その狐を退治しようというのが、フォックス・ハンティングのはじまりなんですね。
貴族が自分の領地の小作人を助けるための、フォックス・ハンティング。ですから貴族としては正々堂々、善行としてフォックス・ハンティングを行なった。今なお、フォックス・ハンティングが格式の高いスポーツとされるのは、そのためなんですね。
フォックス・ハンティングのための猟犬として改良されたのが、フォックステリア。フォックステリアが出てくる小説に、『ロイス・タゲットのロングデビュー』があります。J・D・サリンジャーが、1942年『ストーリー』9ー10月号に発表した短篇。

「だれかがフォックステリアを散歩させているのをみて、「犬を飼いたい」と思った。」

これは、富豪の娘、ロイス・タゲットの感想。また、『ロイス・タゲットのロングデビュー』には、こんな描写も出てきます。

「ビルはとてもいいネクタイを持っていて、ぜいたくなブロード地のシャツを着て…………………」。

ビル・テダートンは、ロイス・タゲットの結婚相手という設定。「ブロード地」は、平織綿布のこと。ただし純然たる和製英語。
日本で言う「ブロード」は、イギリス英語での「ポプリン」に相当するもの。それが「ぜいたくな」というのですから、糸が細いのでしょう。いわゆる「高番手」。たとえば、「百二十双」だとか。これは絹を思わせるしなやかさを持ったシャツ地なのです。
でも、私にとっては「すっぱいぶどう」なのかも知れませんが。

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