スパニエルとスパッツ

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スパニエルは、犬の種類ですよね。たとえば、コッカー・スパニエルだとか。グランバー・スパニエルだとか。
スパニエルがお好きだった作家に、阿川弘之がいます。それというのも、阿川弘之には『スパニエル幻想』と題する短篇があるので。名前は、「トン」。血統書つきの、バフの、コッカー・スパニエルと、説明されています。この「トン」が、ある日突然、しゃべりはじめて…………………。もっとも「幻想」なんですから、なにがあっても不思議ではありませんが。
阿川弘之にはもうひとつお好きなものがあって、列車。列車がお好きだった作家に、内田百閒が。内田百閒に続くのが、阿川弘之でありましょう。
ある時、三人の作家がヨオロッパに旅することに。阿川弘之、遠藤周作、北 杜夫。ある日、巴里で一日、空いた。で、阿川弘之は、遠藤と北を、トゥールズへの列車の旅に誘う。ところが、遠藤も北も乗ってこないので、阿川のひとり旅に。その時の阿川弘之のひと言。

「北と遠藤は馬鹿だなあ」

さらには北 杜夫と遠藤周作を、「畸人」と決めつけて。でも、北も、遠藤も、どうやら阿川のことを「畸人」だと思っているらしい。
ところで、阿川弘之は、どうやって小説を書くのか。とりあえず、出だしを書く。出だしの三行が書けたら、「半分できたようなもの」。『私の小説作法』には、そのように書いています。だから、書き出しがたいへんなんだ、と。
スパニエルが出てくる小説に、『夜の森』があります。ジューナ・バーンズが、1937年に発表した物語。物語の背景は、1920年代の巴里になっています。

「喘息病みの年老いたスパニエル犬を連れている………………………」。

これは、デ・スパーダ侯爵夫人の様子。また、『夜の森』には、こんな描写も。

「あいもかわらずスパッツをつけ、モーニング・コートに身をつつみ………………」。

これはフェリクスという人物の着こなし。
いいなあ、スパッツ。スパッツ姿で、スパニエルの散歩をさせるのは、夢物語。いや「幻想」でありますが。

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