リンネルとリーファー

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リンネルは、リネンのことですよね。もちろん、麻。もっと正確には、亜麻。
リネンはリネンで良いではないか。そんなご意見もあるでしょう。が、リネンという前には、「リンネル」が一般的だったのです。
「リンネル」は古語、「リネン」は現代語と言えなくもありません。
いや、リンネルよりももっと以前には、「リンネン」と呼んだらしい。言葉の順序だけから申しますと。まず、「リンネン」があって、「リンネル」になって、「リネン」へと。
では、どうしてリンネンなのか。これはオランダ語の「リンネン」
l inn en をそのまま耳で聞いた言葉だったのでしょう。
1920年に、有島武郎が書いた童話に、『一房の葡萄』があります。この中に。

「先生は眞白なリンネルの着物につゝまれた體を窓からのび出させて、葡萄の一房をもぎ取つて……………………。」

もちろん、これは童話ですが、有島武郎が実際に体験したことでもあったのです。
明治十七年の九月に。この時、有島武郎は六歳で。横濱、山手の「英和学校」に入る。当時の「英和学校」は主に異人の通う学校。ですから、「先生」とあるのも、アメリカ人女性だったのです。
そのアメリカ人教師が、「眞白なリンネルの着物」。これはおそらくドレスだったろうと思われます。それはともかく、「リンネル」は明治語だったとも言えるに違いありません。
有島武郎は、明治三十六年に、アメリカに留学。八月二十五日、横濱を発っています。たぶんアメリカで、有島武郎は「リネン」の言葉も、耳にしたことでしょう。
リンネルが出てくるミステリに、『非情の日』があります。1972年に、ジャック・ヒギンズが発表した物語。

「すりきれたカラー、くたびれたリンネルの背広。うだつのあがらぬ音楽家というところだ。」

これは、武器商人で、富豪の、ジュリアス・マイヤーの着こなし。人の目を欺くための扮装。
また、『非情の日』には、こんな描写も。

「彼の身体を固定させているロープは、リーファー・コートに隠れて見えない。」

これは、「ドーリイ」と呼ばれる男の様子。『非情の日』には何度も「リーファー・コート」が出てきます。
ジャック・ヒギンズは『非情の日』に限らず、「リーファー・コート」の表現がお好きらしい。そして、ヒギンズとしてはどうもピー・ジャケットの代りに、「リーファー・コート」の言葉を使っているようです。
もともとの「リーファー」r e ef er は、「海軍士官候補生」を指す俗語だったのですが。そこから彼らの着ている制服の、両前上着を意味するようになったものですが。

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