フラスコとファーン

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フラスコは、ガラス容器のことですよね。むかし、理科の実験で使った記憶があります。
三角フラスコだとか。横から見ると三角形に思えるので、「三角フラスコ」なのでしょう。
フラスコは、ポルトガル語の「フラスコ」 fr asc o から出ているんだそうですね。もちろん、「器」の意味。

「瑠璃白玉のふらすこにちんだ泡盛…………………。」

近松門左衛門が、享保十九年に書いた『傾城酒呑童子』の一節にも、そのように出ています。享保十九年は、西暦の1734年のことです。
ここでの「ふらすこ」が、今のフラスコであるのは、いうまでもないでしょう。少し分かりにくいのが、「ちんだ」。これは、赤ワインのこと。
やはりポルトガル語の、「ヴィーノ・ティント」から、「チンタ」もしくは「ちんだ」と言ったものです。日本人も、実はかなりはやくからワインを飲んでいたものと思われます。
ポルトガル語で、フラスコ。英語で、フラスク fl ask 。「ポケット・フラスク」なんていう時のフラスクです。ヒップ・ポケットにも入れておきやすいように、全体がカーヴを描いたりしていることがありますよね。
時と場合によって、身体を暖める目的で、ポケット・フラスクから、ひと口飲んだりすることもあります。
フラスクが出てくる小説に、『クロッカス反乱」が。1985年に、ギャヴィン・ライアルが発表した物語。

「書類鞄から銀のカップ一セットと大きなフラスクを取り出した。」

もちろん、中にはスコッチ・ウイスキイが入っているのですが。英国、国防省、副本部長室での、会議の席で。もっとも、これは小説ではあるのですが。
また、『クロッカスの反乱』には、こんな描写も出てきます。

「鹿毛色の薄地の服を着て、ひんやりしたなかでレインコートの前を開いているが………………。」

「鹿毛色」。これはどんな色なのでしょうか。鹿の毛の色。私は勝手に、「ファーン」fawn だと思ったいるのですが。日本でいう「白鹿毛」と呼ぶのに近いものでしょう。
ほんとうに淡い、黄褐色のこと。女性のベージュ。男性のファーン。この上なく粋な色です。フラスクでウイスキイを飲むにも、お似合いでしょう。

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