ブックとブレイシーズ

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

ブックは、本のことですよね。書籍であり書物であり、単行本のことであります。book と書いて「ブック」と訓みます。
ブックは古代英語の「ボック」boc と関係があるんだそうですね。ボックはもともと「ブナの木」のこと。今の紙の時代の前には、樹皮が紙の代わりとされたんだとか。
それで、ブナの樹皮からやがて「本」の意味が生まれたんだとか。
ブックが出てくる小説に、『雪中梅』があります。明治十九年に、末広鉄腸が発表した物語。

「先刻お隣の坊ちやんが遊びに来て写真の挿さんである「ブツク」を傷めましたから、直しに遣らふと思つて………」

これは「お春」の科白として。本の中に写真を挟んでいたのでしょうか。
本が出てくるミステリに、『法と淑女』があります。1875年に、英国の作家、ウィルキー・コリンズが発表した長篇。

「本の背の題字が読めるところまで近寄って下の方の棚を見ていきました。ヴォルテールは赤、シェイクスピアは青………」

これは少佐の書斎を眺めている場面でのこと。少佐は愛書家で、それぞれに凝った装丁を施しているのです。当時の本の読み方としては、ごく常識的なことだったのですが。
また、『法と淑女』には、こんな描写も出てきます。

「………女性からの贈物がいっぱい入っていました。刺繍の入ったズボン吊り………」

これもまた少佐の収集品として。
十九世紀のブレイシーズは、多く家庭内で作られたものです。凝った刺繍をあしらったりして。また、その刺繍の図柄をこっそり見せるのも、洒落者の愉しみだったのです。
どなたか洒落れた刺繍のブレイシーズを作って頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone