ソーダとソリッド

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ソーダは、炭酸水のことですよね。「ソーダ割」なんていうではありませんか。
たとえばウイスキイを炭酸水で割ると「ウイスキイ・ソーダ」になります。まあ、ハイボールと同じことなのですが。
ウイスキイであろうとブランデーであろうと、ソーダで割ると、飲みやすくなります。第一、度数がそれだけ低くなるわけですからね。
それに、爽やかな飲み口に。シュワシュワの感触がなんとも宜しい。一杯が二杯に、二杯が三杯になるわけです。
明治の頃には、「平野水」と言ったらしい。兵庫県の「平野温泉」から、天然の炭酸水が涌き出ていたので。これを壜詰にして、全国に送ったんだそうですね。
「ウイスキイ・ヒラノ」。一度飲んでみたかったものです。
ソーダが出てくる小説に『竹沢先生と云ふ人』があります。大正十四年に、長与善郎が書いた物語。

「吾々は公園に這入り、「その代りおつき合ひをしませう。」とそこの茶屋でソーダ水を飲んだ。」

これは「竹沢先生」と私とが。この「竹沢先生」には、
長与善郎のお父さん、長与専斎の印象が含まれているんだそうですが。

ソーダが出てくる小説に、『結婚しません』があります。山口 瞳の連作短篇集。『結婚しません』は、昭和四十年代に連載されたものです。

「同じ銘柄のスコッチが二本、ブランデーが一本、ケースに入ったままのソーダ瓶………」
これは「広畑」がはじめて「桃子」の部屋を訪ねた時の様子として。桃子はもちろんマンションでの一人暮らしという設定になっています。

山口 瞳著『結婚しません』には、こんな文章も出てきます。

「男はきちんとした黒っぽい背広を着て、濃紺の無地のネクタイを締めている。」

「濃紺の無地のネクタイ」。これは意外にも愛好家が多いものです。ダーク・ブルウ。ソリッドのネクタイに。
たとえば、同じく作家の、諸井 薫。本名、本多光夫。
諸井 薫はいつもダーク・ブルウのスリーピース・スーツに、ダーク・ブルウの無地のネクタイを結んでいました。
たぶん、ダーク・ブルウ、ソリッド以外のネクタイはお持ちではなかったのではないかと、思われるほどに。
無地、ソリッドもまた柄のひとつです。ソリッドのタイを選ぶことは、静謐への高らかな宣言でもあるでしょう。
どなたか最高のソリッドのネクタイを作って頂けませんでしょうか。

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