アイスクリイムとアビ

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アイスクリイムは、冷たい菓子のことですよね。食事の間に少しアイスクリイムが出てくることもあります。もちろんデザートがアイスクリイムということもあるでしょう。
むかし、子どもの頃、家でアイスクリイムを作ったことがあります。大きな木桶と茶筒とを用意して。茶筒の中には牛乳と砂糖などを入れておいて。木尾桶には、氷と塩。氷に塩を加えると、温度が下がってくれるからです。
その冷たい氷の中で、ミルクの入った茶筒を飽きることなく回していると、やがてアイスクリイムになっていたものです。
夏になると、自転車に乗ったおじさんがアイスクリイムを売りにきました。ただしこれは、「アイスクリン」だったのですが。

「見渡した所では人造石の高い塀の前に出て居る大道アイスクリーム屋と、其処にしやがんで扇を使つて居る客と、それだけだつた。」

志賀直哉が、大正二年に発表した短篇『出来事』は、そのようにはじまっています。大正のはじめには、「アイスクリーム屋」があったのでしょうね。

アメリカでは、トーマス・ジェファーソンがアイスクリイムを食べたという記録が遺っています。トーマス・ジェファーソンが「アメリカ建国の父」と呼ばれる人物であるのは、言うまでもないでしょう。
トーマス・ジェファーソンは、1784年から1789年にかけて、フランス駐留大使を勤めています。この時の巴里で、アイスクリイムの味に出会って。
アメリカ帰国の際、アイスクリイムの処方を持ち帰ったという。ヴァージニア州モンティセロの屋敷に、アイスクリイムのための氷室を建てたそうです。それは主にヴァニラ・アイスクリイムだったそうですが。
フランスでのアイスクリイムは、「ソルベ」。これはイタリアから伝えられたものなんだそうですね。

「どのカフェの前でも、道のまんなかまではみ出した椅子に物好きな連中がおおぜいかけてアイスクリームをたべ、道行く人を批評している。」

1839年に、フランスのスタンダールが書いた『パルムの僧院』に、そのような一節が出てきます。
また、『パルムの僧院』には、こんな描写も。

「そして半時間ごとにフランス風にりっぱな燕尾服を着、剣をつけた給仕頭がアイスクリームをすすめにやって来た。」

これはあるパーティーでの様子として。
「燕尾服」。フランスなら、「アビ」habit でしょうか。
英語の「イヴニング・ドレス」に相当します。テイラーとしてはもっとも高い技術を求められる服装です。
どなたか完璧なアビを仕立てて頂けませんでしょうか。

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