シナとジャボ

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シナは、今の中国のことですよね。英語の「チャイナ」。フランス語の「シーヌ」と同じように。
支那と書いて、「シナ」と訓みます。これは中国「秦」の時代から来ているんだそうですね。シンから「シナ」になったのでしょう。
江戸語。江戸時代には多く「シナ」と呼んだんだそうですね。

🎶 シナの夜 シナの夜よ

その昔、渡辺はま子が歌った『シナの夜』は、たしかそんな出だしだった記憶があります。
たしかに今は中国と呼ぶのですが、時に「支那そば」の看板を掲げる店もないではありません。戦前には、「支那そば」と言ったんだそうですね。
おしゃれの方でも「支那結び」があります。細紐を結んでのボタン代わり。片方のループを、もう片方の結んだ「玉」にかけて留めるやり方のものです。チャイナ・ドレスにはよく見かけるものでしょう。

シナが出てくる小説に、『モーパン嬢』があります。1835年に、フランスの作家、テオフィル・ゴーティエが発表した長篇。

「鐘楼のような尖がり帽子にシナの日傘ほど幅広い縁………」

当時の女性ファッションの描いている一場面として。
その頃中国風俗も巴里に受け入れられているのでしょう。たとえば、「クエエプ・ド・シイヌ」。直訳すれば「中国ちりめん」でしょうか。漣のようなシボが美しい絹地のことです。
クエエプ・ド・シイヌ。ここから生まれた日本語が、「デシン」なのですね。
『モーパン嬢』には、こんな描写も出てきます。

「頭には真珠の髪飾り、虹色のドレス、大きなレースの胸飾り、赤いヒールの靴、孔雀の羽の華やかな扇………」

この「胸飾り」の原文は、「ジャボ」jabot になっています。
ジャボは女性に限ったものではありません。十九世紀の男たちは好んでジャボのあるシャツを着たものです。
胸に白い紫陽花が咲いたような細かい襞飾りのことであります。
どなたかジャボのあるシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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