ゲランは、人の名前にもありますよね。ことにフランス人の名前に多いようですが。
Guerain と書いて、「ゲラン」と訓みます。
ゲランで誰もがすぐに想い浮かべるものに、香水があるでしょう。1828年に、ピエール=フランソワ=パスカル・ゲランがはじめたので、その名前があります。
ピエール=フランソワ=パスカル・ゲランは、1798年の生まれ。若い時に英國に渡って修業。英國の石鹸屋に勤めたとのこと。
1820年代にフランスに戻って、イギリスの香料石鹸を輸入することに。これが好評だったので、香水をはじめることになったんだそうですね。
1889年のゲランのヒットさ作に、「ジッキー」Jicky があります。これはエメ・ゲランの創作した香水の名前。
エメ・ゲランもまた若くしてイギリスに留学をしています。そこで一生に一度の恋を。でも、両親の反対にあって、結婚を断念。エメ・ゲランは生涯結婚することがなかったという。
そのエメが恋人につけた仇名が、ジッキーだったのです。
1912年に、ジャック・ゲランが発表した名香に、「ルール・ブルウ」があります。日本語に意訳いたしますと、「たそがれ刻」でしょうか。まさに夕暮れ時の幻想的な香りになっています。
ジャック・ゲランはまた、「ミツコ」の生みの親でも。1919年のことです。その名前の通り、どこか東洋的な薫りを感じさせるものであります。
フランスの作家、クロード・ファレルが書いた『ラ・バタイユ』のヒロインの名前がヒントになっています。
小説といえば、「夜間飛行」。これまた、ゲランの傑作。フランス語なら、「ヴォル・ド・ニュイ」。サン=テグ・ジュペリとは友人だった、ジャック・ゲランが考案したものです。
ゲランが出てくるくる伝記に、『クレマンソー』があります。2017年にミッシェル・ヴィノックが発表したジョルジュ・クレマンソーの物語。この中に。
「投票日の晩には、ゲランの仲間を先頭にしたデモ隊が、エリゼ宮に向かう新大統領に」
そんな一節が出てきます。ここでの「ゲラン」は、左翼の指導者、ジュール・ゲランのことなのですが。
当時、フランスの大統領だったジョルジュ・クレマンソーと親友だったのが、画家のクロード・モネ。
クレマンソーは後にモネの名画『睡蓮』を国家に寄付してもいます。
クレマンソーは、1860年代に兵役をも経験しているのですが。今に、ケピをかぶったクレマンソーの写真が遺っています。
「ケピ」は、日本の学生帽に似ていなくもありません。鍔が狭く、角ばったスタイル。もともとはフランスの軍帽だったもの。後の時代になって、フランスの警官の制帽にも採用されています。
どなたか現代版のケピを作って頂けませんでしょうか。