ワインとワイド・ブリム

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ワインは、葡萄酒のことですよね。フランスならヴァンでしょうか。イタリアならヴィーノでしょうか。
ワインにはポリフェノールが含まれているんだとか。ポリフェノールがあるかどうかはさておき、一杯のワインは陶然の心地に誘ってくれるものです。
第一、一杯のワインは食事を更に美味しくしてくれるところがあります。ワインに感謝。
江戸時代にもワインはあったらしい。主に「チンタ」と呼ばれたんだそうそうですが。これはオランダ語の「ヴィーノ・ティント」から出た言葉。つまりは赤ワインの意味だったのですね。「色のついたワイン」を指す言葉だったので、「チンタ」また、「珍陀」の文字を宛てることもあったようですが。

紅の チンタ流るる 春の水

井原西鶴の句にそんなのがあります。井原西鶴もまたワインをお飲みになったことがあるのでしょう。
チンタを飲んだお方に、杉田玄白がいます。あの『蘭学事始』の杉田玄白のこと。
大正十二年に、菊池 寛が発表した小説『蘭学事始』に、そのことが出てきます。

「到頭、おしまひに加比丹が、珍陀と云ふ、珍しい酒を出して、皆を饗応した。」

そんな文章が出てきます。杉田玄白は蘭学研究のためにもワインを経験したに違いありません。

菊池 寛が昭和二年に発表した短篇に、『蛎フライ』があります。これは「愛子」という牡蠣フライの好きな女性が出てくる物語になっています。
食堂車の中で偶然、愛子を見掛ける内容になっているのですが。

「健作は、晩飯食つてゐないので、ビフテキとチキン・ライスを註文した。」

この「健作」が物語の主人公なのですが。
ビフテキを食べるなら、赤ワインが欲しいところ牡蠣フライなら、白ワインですが。
ワインが出てくる小説に、『人間の絆』があります。英國の作家、サマセット・モオムが、1915年に発表した自伝的小説。長篇でもあります。

「フィリップは給仕に、近所の酒場からバーガンディを一びん買ってこさせ、二人はポタージュの野菜スープと、キルシュ入りオムレツを注文した。」

これはロンドンの、ソーホーのレストランでの様子として。ここに「バーガンディ」とあるからには赤ワインだったのでしょうね。
ロンドンでは時にワインを置いていないレストランがあります。これは酒類の免許の関係から。そんなレストランでは、あらかじめワインを買ってから店に入ることもあるのですが。
モオムの『人間の絆』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。

「例の大きなソフト帽をかぶり、ゆったりとしたうす色の服を着込んで、招待展に集まった上流貴紳の群れのなかで、いささかとまどっているようすである。」

これは主人公のフィリップの友人、「ローソン」という人物について。
ここでの「大きなソフト帽」は、「ワイド・ブリム」のことなのでしょう。鍔の広い帽子なので、「ワイド・ブリム」。狭い鍔なら「ナロウ・ブリム」になります。赤ワインにするか、白ワインにするかに似て、好みの問題です。
どなたかワイド・ブリムのソフト帽を作って頂けませんでしょうか。

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