フランドルは、フランダースのことですよね。
Flandre と書いて「フランドル」と訓みます。フランダースは英語式になります。
フランドルは今のベルギー北西部の旧名。
ベルギーには、スヘルデ川が流れていて。その川沿い一帯を「フランドル」と呼んだのだそうです。
今もこの辺りではオランダ語が主に用いられるのですが。
昔のフランドルは繊維産業で栄えた国でもあります。フランドルは中世からウール産業の中心地だったのです。
英国から羊毛を仕入れて、ウール地に加工して、世界中に輸出。
ただ、それ以前には、リネン産業だったのです。スヘルデ川流域には、麻が実り、そこから繊維を得たわけですね。もちろん、リネン。
当時のフランドル・リネンには絹のような光沢があって、高級品だったのです。
ヨオロッパの上流階級では、フランドル・リネンを高く評価したという。
フランドル・リネンはただ生地に仕上げられるだけでなく、レエスにも。
フランドル・レエスは貴重で、高価で、密輸が絶えなかったそうです。
そんなこともあって、ヨオロッパではフランドル・レエスの着用禁止令まで出されたとのことです。
このフランドル・リネンの後に、だんだんとフランドル・ウールの時代になってゆくのですが。
フランドルはまた「金羊毛騎士団」とも無関係ではありません。
「金羊毛」。つまり、「ゴールデン・フリース」の話はよくご存じのことでしょう。。
今もブルックス・ブラザーズの紋章は、このゴールデン・フリースになっていますから。
ゴールデン・フリースの伝説は古代ギリシアの神話にはじまっています。
古代ギリシアでは「黄金の羊」の存在が信じられていて。
テッサリアの王子、イアソンは五十人の勇者を選んで、「黄金の羊」を探す旅に出かけさせています。その結果、「黄金の羊」は発見された。ギリシア神話はそのように語っているのですが。
1429年ブルゴーニュ公、フィリップはブルージュでイザベラと結婚。これを記念して、「金羊毛の騎士」を設けています。騎士団の数は最初二十三人で、後に五十一人になったと、伝えられています。
子供の頃、誰もが読んだ物語に、『フランダースの犬』があります。哀しい内容の童話なのですが。
これは少年のネロと、愛犬のパトラッシュとの愛情物語。
「美しい、堂々とした鐘の音が霜の朝に鳴りひびき、雪の平野では日の光がきらめいていました。」
ここに描かれている教会は、今もアントワープにある「聖母大聖堂」のことなのです。
『フランダースの犬』は、英国のウィーダの作として、1872年にロンドンで刊行されています。
ウィーダは筆名。本名は、マリイ=ルイズ・ド・ラ・ラメーというイギリス人女性だったのですね。
マリイは1871年にアントワープに旅して、その印象から『フランダースの犬』を書いたのであります。
そのようなわけで、長い間、フランドルでは『フランダースの犬』は識られていなかった。
でも、今は「聖母大聖堂」の前には立派な「記念碑」が建っています。
1980年代から、アントワープに、『フランダースの犬』の読者が多く訪ねるようになったので作られたものです。
「ネロ少年と愛犬パトラッシュの記念碑」は、日本の「トヨタ財団」の寄附あったとのことです。
フランドルが出てくる小説に、『教授』があります。英国の作家、シャーロット・ブロンテが、1857年に発表した物語。
「色塗りのフランドルの農家。」
これは物語の主人公が旅している場面として。
『教授』には、こんな文章も出てきます。
「この財布を仕上げさえすれば、このトルコ帽を完成さえすれば、彼女にとってはそれで満足なのです。」
これは「リューテル」の気持として。
ここでの「トルコ帽」は、「フェズ」fez のことかと思われます。英語でもフランス語でも、「フェズ」。
その昔、モロッコの「フェズ」で作られた帽子なので、その名前があります。
小型のバケツを伏せた形の帽子。
どなたかフェズを作って頂けませんでしょうか。