手袋は、グラヴのことですよね。
グローヴと呼ぶこともあります。
glove と書いて「グラヴ」と訓みますね。
グラヴはふつう五本指の手袋のこと。
二本指の手袋は、「ミトン」となります。
手袋は古代エジプトの時代にもあったらしい。
紀元前1360年頃のトゥタンカーメンの古墳からも、五本指の手袋が見つかっていますから。
昔の日本にも手袋らしきものがなかったわけではありません。
弓懸(ゆがけ)。
弓で矢を射る時の手に嵌めたもの。
弓懸もまた五本指で、手頸のところで共紐で結んで、嵌めた。
おそらくは鹿革などで作られた手袋だったのでしょう。
「なき後の形見に見候へ。鞭と弓懸をば、二人の乳母(めのと)が方へやるべし。」
中世の古書『曽我物語』に、そのような一節が出てきます。
弓矢のある所には弓懸があった。そう考えて良いでしょう。
「庄屋らしい袴をつけ、片肌ぬぎになつて、右の手ゆがけの革の紐巻きつけた兄をそんなところに見つけるのも、お民としてはめづらしいことだつた。」
島崎藤村が、昭和四年に発表した『夜明け前』に、そんな文章が出ています。
ただし、物語の時代背景は、幕末におかれているのですが。
妹のお民が兄の矢場を訪ねた時の様子として。
手袋が出てくる小説に、『大悪党』があります。
スペインの作家ケベードが、十七世紀に発表した物語。
「別の側では行商人が店を開いていて、数珠を見せる者やら、ハンカチを振る者やら、手袋を吊す者やら、」
これはある広場での露店の様子として。
作者、ケベードは1580年9月17日。スペインのマドリッドに生まれています。
ケベードもまた波瀾万丈の人生を送った人物。
1606年頃から小説を書きはじめています。
『大悪党』には、こんな描写も出てきます。
「わたしが宿屋の主人からサスペンダーを三つ買いましたので、彼はそれでズボンを留めました。」
時代は、十七世紀。ズボンを穿くにはサスペンダーが必需品だったでしょう。
スペインでのサスペンダーは、「ティランテス」
tirantes 。
どなたかスペインふうのティランテスを作って頂けませんでしょうか。