お茶の子とズート・スーツ

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お茶の子って、言いますよね。
お茶の子って、なんでしょう。これは昔の、起きてすぐの、ごく簡単な、朝食代わりの食事のことだったそうですね。それで。

お茶の子サイサイ
お茶漬けサラサラ
お香こパリパリ

そんな言い方も生まれたんでしょう。
お茶漬けは映画の題にもなっています。『お茶漬けの味』。昭和二十七年の、小津映画ですよね。
小津安二郎は戦前からこの製作を温めていたらしい。でも、企画が通らない。どうして企画が通らないのか。
「赤飯ならまだしも。お茶漬けなんて誰が……」。まあ、そんな時代だったのでしょう。
映画『お茶漬けの味』が公開されて。銀座辺りに何軒ものお茶漬け屋ができたんだとか。
『お茶漬けの味』は小津安二郎のことですから、配役にも凝っています。「社長」役に、石川欣一。この人の本職は、随筆家なんですね。ただしその頃は「社長」でも。北原三枝も出ていますが。
昭和二十七年といえば。1952年のこと。この年に生まれたのが、ウオルター・モズリイ。アメリカの、ハードボイルド作家。ウオルター・モズリイの第一作が、『ブルー・ドレスの女』。1940年代のロサンジェルスが舞台になっています。この中に。

「格子柄のズートスーツを着て、シャツの前面を派手なズボン吊りが下に通り、エナメル革の靴の上にはスパッツがかぶさっていた。」

これは暗黒街の住人、レイモンド・アレグザンダーの装い。ズート・スーツは、極端なシルエットのスーツのこと。
ズート・スーツは眺めるだけにして。お茶漬けでもいただくとしましょうか。

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