スピーディーは、「素早い」という意味ですよね。スピーディーの反対は、「スローリー」でしょうか。私のようにスローリーなやつに限ってスピーディーに憧れるものであります。
それというのも、一時、『スピーディー・ゴンザレス』ばかり聴いていたことがあります。1960年代のはじめ。パット・ブーンが歌っていました。
『スピーディー・ゴンザレス』は明るい、軽快な歌、それこそスピーディーな歌い方でありました。ただ、調子が良いので聴いていたので、それがアニメの主人公だとは、まったく知りませんでしたが。
アニメの『スピーディー・ゴンザレス』は古くからあって、アメリカ人なら知らない人がいないくらいの主人公だったんだそうです。それを1962年になってパット・ブーンが吹き込んだのが、ポップスの『スピーディー・ゴンザレス』。どうりで、明るいはずですね。
エド・マクベインの『警官嫌い』にも、「スピーディー・ゴンザレス」が出てきます。
ある事件の現場に、同僚の警官が遅れて到着。その時の、皮肉をこめた会話。
「スピーディー・ゴンザレスとワーラウエイでもないのに、ずいぶんお早いお着きだね…………」。
ところで。「ワーラウエイ」というのが、分からない。「ワーラウエイ」は、当時人気のあった競馬馬の名前なんだそうです。直井 明著『87分署グラフィティ』に出てくる話なんですが。こうなるとミステリを読みこなすのも、ひと苦労ですよね。
エド・マクベインといえば、『最後の希望』があります。この中に。
「新郎はストライプのズボンに灰色のモーニング・ジャケット。」
そんな描写が出てきます。では、どうしてモーニング・コートにはストライプト・トラウザーズなのか。
これはむかしの乗馬ズボンの名残りなのです。十九世紀のはじめまで、ナンキーンという縞ズボンを乗馬用に穿くことがあって。
その時代のモーニング・コートはれっきとした、「乗馬服」。縞の乗馬ズボンを合わせるのは、ごく当たり前のことだったのです。
ストライプト・トラウザーズを穿いた時には、必ずしもスピーディーでなくてもいいですがね。