スイスとスーツ

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

スイスは、美しい国ですよね。国そのものの景観がまず美事。かてて加えて、その美しい国をさらに美しく保とうとする気迫のようなものさえ感じられます。
スイスを訪れた文人に、江國 滋がいます。江國 滋はスイスを旅したばかりでなく、紀行文をも書いています。その紀行文の題が、『スイス吟行』。思わずにやりとさせられてしまうではありませんか。
しかも旅の同行者は、鷹羽狩行。なんとまあ贅沢な吟行ではありませんしょうか。芭蕉と曽良の現代版ともいえるでしょう。
江國 滋著『スイス吟行』を読む限り、江國 滋と鷹羽狩行とは、スイスの行く先々で、美女にばかりお会いになっている。なんのご利益のせいなのか。

「まっ赤なハーフコートをはおったエマにエルが抱きついてきた。」

これは、ジュネーブ・コルナイバン駅に降りたとたんの、様子。羨ましいではありませんか。
しかも『スイカ吟行』なのですから、江國 滋は鷹羽狩行の胸をかりて、句作合戦をくりひろげて。

スイスにも あるなでしこの 咲きつぷり

そんな一句を詠んだりもしています。
昭和十一年にスイスを訪れた文人が、横光利一。横光利一はスイスで、その光景にうたれて、こう書いています。

「今眼前にこの風景に接するとき、寫眞はたうていその實景を映さずと思つた。」

『スヰス』の中の一文です。その前年、昭和十年に発表した小説に、『家族会議』があります。この中に。

「次の部屋に這入ると、着物を脱いで、スポーティなスーツに着替へた。」

「スポーティなスーツ」とは、どんなものなのでしょうか。私なら、軽い単衣の、スーツを想起するのですが。
スポーティなスーツで、スイスを旅したいものですね。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone