カーマインは、色の名前ですよね。カーマイン・レッドだとか。むかしは、「洋紅色」などとも呼んだのだそうです。「真紅」と言っても、それほど大きな間違いではないでしょう。
昔むかしのカーマインは、ある特殊な昆虫を擦りつぶして、染めたんだとか。中世のウールを染めるために。
カーマインから勝手に想い浮かべるものに、ロオトレックがあります。フランスの画家、ロオトレックが、1893年に描いた『アリストティード・ブリュアン』を。この絵の中のブリュアンは、黒いマントにカーマインのマフラーを巻いています。
ブリュアンはこのロオトレックが描いた絵がお気に入りで、必ず店にポスターとして、貼らせたという。
ブリュアンは、「ミリルトン」の店主でもあって人物。「ミリルトン」は、当時、モンマルトルにあった上品ならざるキャバレエ。このキャバレエに足繁く通ったのが、ロオトレック。ブリュアンもロオトレックが気に入り、「ミリルトン」にロオトレックの絵を飾っていたほどなどです。
「ミリルトン」は悪口雑言の飛び交うキャバレエだったのですが、なぜか後のエドワード七世が皇太子の時代、お忍びで通ったという。
カーマインが出てくる小説に、『翼の一撃』があります。『翼の一撃』は、1924年に、ウラジミール・ナボコフが発表した短篇。この中に。
「それから彼女はぱっと顔をほころばせた ー カーマインと象牙の顔を。」
「カーマインと象牙の顔」。一度、お目もじ願いたいものですが。また、『翼の一撃』には、こんな描写も出てきます。
「彼は電気をつけ、カフスボタンを糊がぱりっときいた爽やかなシャツの袖口にはめた………………。」
まさか、「カーマインと象牙の」 カフ・リンクスではなかったでしょうが。
いや、時には、「カーマインと象牙の」カフ・リンクスがあって良いのかも知れませんが。