カウズは、地名にもありますよね。
Cows と書いて「カウズ」と訓みます。
英国、イングランド南部、ワイト島の玄関口に。もちろん港町。
ワイト島にはメディナ川が流れていて。カウズの対岸にあるのが、イーストカウズ。イーストカウズとカウズの間はフェリーで結ばれています。
カウズそのものの面積は、ざっと2、8キロなんだそうですね。人口は約1万人ほど。
カウズは今も昔も、夏の避暑地として知られています。有名なのはカウズでのボートレース。1826年以来の伝統があります。
毎年の八月第一週に行われるレガッタ競技。
カウズは英国での高級避暑地のひとつ。
毎年の夏、王室専用よっとがカウズ沖に停泊していた歴史がありますので。
十九世紀のはじめ。このカウズ沖でのヨットでの夕食用に考えられたのが、今のディナー・ジャケット。当時皇太子(後のエドワード七世)が言いはじめて。
テイルのない燕尾服を「ヘンリー・プール」で仕立ててさせたのがはじまり。
そのために最初は「カウズ」の名前で呼ばれたものです。
カウズでの船上パーティーで知り会ったのが、ランドルフ・チャーチルと、ジャネット・ジェローム。
1873年8月12日の夜に。
おたがいに一目惚れだったという。
ジャネット・ジェロームは、アメリカの富豪のお嬢さま。
その結果として、後のウインストン・チャーチルが生まれたわけですね。1874年11月30日に。
もし今様の言い方の表現なら、ウインストン・チャーチルはハーフだったわけです。
カウズが出てくる長篇小説に、『失われた時を求めて』があります。マルセル・プルーストの傑作。
「なんてすてきなんでしょう、カウズのレガッタに行けるなんて! 」
これは「アルヴェルチーヌ」の科白として。
ここでも窺えるように、十九世紀末のフランスの上流階級には、イギリスへの憧れがあったらしい。
わざと英語をつかって話す場面も出てくるほどに。
マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』を読んでおりますと。
「「カノティエ」をかぶった婦人が、私にはけっして入りこめない日常の軌跡を描きつつ、ぐずぐずしているグレーハウンドを呼び寄せ、すでにランプの灯された山荘風別荘に帰ってゆくところも見える。」
「カノティエ」canotier もまた、英国趣味のひとつとしてはじまっています。
もともとは英国の学生が、ボート競技の時にかぶった帽子なので。
英国では、「ボーター」boater 。フランスでは、「カノティエ」。これは「漕ぐ人」の意味。
どなたか十九世紀ふうのハット・バンドの広いカノティエを作って頂けませんでしょうか。