小品という言葉があるんだそうですね。小さな品と書いて、小品。これはなにか謙遜の表現なんでしょうか。
夏目漱石の読物にも、「小品」があります。短篇よりも、もっと短い断篇。たとえば、『永日小品』だとか。『永日小品』は短くても、深いし、面白い。結局、凝縮されているということなのでしょう。
元日に、漱石の友だちがやってくる話があります。虚子もその中のひとり。で、虚子が、鼓を打つ。虚子は鼓を打つ前に、火で炙る。
これなんかも漱石が書いてくれているからこそ、分かることです。ほのぼのとした元日の空気が立ちのぼってくる、「小品」。
先生としての漱石は、英文学。漱石は英文学についても書いています。『文學評論』の中に。『文學評論』は、主に十八世紀の英國文學がどんな風であったかについて、述べられているのですが。この中に。
「眞紅のチヨツキに金釦をつけて黑絹のヅボンを穿いたのがピツトの味方と…………………。」
十八世紀には、服装によって、自分の支持団体が何であるのかが、分かった話をしているところ。
しかしそれにしても。赤のウエイストコート、黒のシルク・トラウザーズ。憧れますね。
絹のズボンは、軽くて、皺になりにくい。合わせる相手を問わない。旅には最適の衣裳となってくれるものです。