バルは、バア bar のことですよね。スペインの「バル」は有名でしょう。
でも、バルとはいいながら、カフェにも似ています。スペインの街を歩いていてバルを探す必要はありません。至るところにありますから。
ロンドンにパブがあるように、パリにカフェがあるように、スペインにはバルがあります。
しかし、「バル」はパブよりも、カフェよりも、もっと幅の広い印象があります。珈琲もあり、ビールもあり、食事もできる点において。
その意味ではいっそ「居酒屋」に近いのでしょうか。
日本での居酒屋は、江戸の頃からあったみたいですね。「居酒屋」。訓んで字のごとく、もともとは酒屋だったらしい。酒屋の店先で一杯飲ませた。そのうちにだんだんと小皿料理を出すようになって。
毎晩、居酒屋に寄らないことには、一日が終わらない人もいます。そうかと思えば「居酒屋」で当てたお方もいらっしゃいます。フランスの作家、エミール・ゾラであります。
1876年に、ゾラは『居酒屋』を発表。この小説がゾラの出世作になったのですから。
ゾラの名作に、『ナナ』があります。『ナナ』は、『居酒屋』の続篇とも言えるものです。少なくとも『居酒屋』があったからこそ、『ナナ』が生まれたこと、間違いありません。
1870年代の巴里の下町の様子を識るには、『居酒屋』は最良のテキストでしょう。小説の中での居酒屋は、「酔いどれ」。巴里、ロシュアール大通りの角に位置する、コロンブが経営する店という設定になっています。
『居酒屋』はまぎれもなく、わたしの著書のなかでもっとも貞潔な作品なのである。
1877年1月1日に、エミール・ゾラはそのように書いています。ゾラにとっても自信作だったのでしょう。
スペインのバルが出てくる小説に、『サンディアゴ遥かなる巡礼の道』があります。。フランスの作家、ジャン=クロード・ブールレスが、1995年に発表した紀行文ふうの創作。
「………わたしたちは、バル・ヒメーナで、カフェ・コン・レチェを飲んで待つ。」
これは朝の八時過ぎのこと。ブルゴスのカテドラルを見物しようとして。カテドラルは九時にならないと扉が開かないので。
また、『サンディアゴ遥かなる巡礼の道』には、こんな描写も出てきます。
「………首には海賊みたいに赤いスカーフを巻きつけて。」
これはアスクエタ村で会った、男の様子について。
「スカーフ」。スペインなら、「パニュエーロ」
pañuelo でしょうか。
どなたか海賊に見える赤いパニュエーロを作って頂けませんでしょうか。