ブルゴーニュとブレイシーズ

ブルゴーニュは、フランスの地域名にもありますよね。
Bourgone と書いて「ブルゴーニュ」と訓みます。
ブルゴーニュは大きく申しますと、フランスの北東部。
もちろん、ワインの生産地ですね。ブルゴーニュの中心地は、ディジョン。絹の都、リヨンからも遠くはありません。
ブルゴーニュのイギリスでの呼び方は、「バーガンディ」。バーガンディ・レッドが、ブルゴーニュのワインの色から来ているのは、言うまでもないでしょう。
ブルゴーニュ・ワインの奥は、深い。また、その幅も広い。
古代ロオマの時代から、この地域がワイン造りに適した土地であることが識られていたという。
少なくとも千年の歴史を持っているわけですね。
ブルゴーニュ地方での赤ワインには、まず例外なくピノ・ノワール種の葡萄が。そして、白ワインには、シャルドネ品種が用いられることになっています。
少し離れた場所にピノ・ノワールやシャルドネを植えたとしても、ブルゴーニュ・ワインの複雑微妙な味わいにはならない。
ワインの土壌はまことに不思議なものです。
ひとつの例ですが。1911年のブルゴーニュ・ワイン(赤)は、ヴィンテイジ(貴重な年)だと考えられています。保存さえ良ければ、絶妙この上ない味わいになるとのこと。
そして、また、その味わいは百年経っても飲むに耐え得ると。
たとえば、「ジュヴレ・シャンベルタン」。ジュヴレ・シャンベルタンはブルゴーニュの赤ワインの代表選手。
とにかく西暦の630年には、葡萄の栽培がはじまっているというのですから。
それが今なお極上ワインとして評価されていて。頭が下がるばかりであります。
ブルゴーニュ・ワインが美味であるのは、申すまでもありません。
しかもブルゴーニュ一帯は、美食の都でもあるのですね。
一例ではありますが、「ポール・ボキューズ」。三ツ星レストランであります。こんな郊外に、こんな特別なレストランがあるなんて。誰もが驚く名店であります。
でも、ブルゴーニュには高級レストランだけではなくて。
大衆食堂の質が高い。土地の人たちは、「ブション」bouchon と呼んでいる店々のこと。
ブションはもちろんワインの栓のことなのですが。ワインを一杯傾けるのに、ちょうど良い店の意味なのでしょうか。
二十ユーロくらいで、充分食事が味わえる店。しかもその味なかなかのものでして。
無理やり日本に置き換えるなら、居酒屋でしょうか。一膳飯屋でしょうか。

ブルゴーニュが出てくる小説に、『法と淑女』があります。英国の作家、ウィルキー・コリンズが1875年に発表した物語。

「バーガンディ! ワインの王様ですよ。そしてこれはバーガンディの王様、クロドヴージョです。あなたの御多幸と御健勝を祈念して! 」

これは「デクスター」の乾杯の言葉として。
また、『法と淑女』には、こんな描写も出てきます。

「刺繍の入ったズボン吊り、しゃれたスモーキング・キャップ、」

これは「フィッツ=デイヴィッド少佐」の部屋の様子として。
「ズボン吊り」。イギリス英語なら、「ブレイシーズ」
braces でしょうか。十九世紀までの英国では、家庭でブレイシーズを作ることが多かった。ことに念入りな刺繍が施されたものです。
どなたか十九世紀ふうのブレイシーズを作って頂けませんでしょうか。