本といいましても、いろんな本がありますよね。「無人島に持って行くための一冊の本」とか。
カショギと本との話なんですが。アントナン・カショギという大富豪がいるんだとか。
アントナン・カショギは世界中に十二の大邸宅を持っているという。たとえばスペインにも別荘があって。
スペインの別荘の広さ、五千エーカー。これを坪に直しますと。約六百十二万坪。開いた口が塞がらないとは、このことでしょう。
そのアントナン・カショギがパリに邸宅を買った時。たまたまその豪邸には素晴らしい造り付けの本棚があった。で、カショギは秘書に命じて。「この本棚を本で埋めてもらいたい」と。秘書は訊く。「どんな本にいたしましょうか?」これに対するカショギの答え。
「うーん、そうだねえ。マホガニー色の本がいいねえ。」
大富豪ならではの発想でしょうか。まあ、世の中にはいろんな本があるということなんでしょう。
ジョン・ル・カレ著『ナイト・マネジャー』を読んでいて、教えられた話なんですが。これは1993年に発表された物語。
『ナイト・マネジャー』には、「訳者あとがき」があって。訳者の、村上博基がそんなふうに書いています。本文も愉しいし、あとがきも愉しい。なんだか得を気分にさせてくれます。本文にはこんな描写も。
「血色のいいロンドンのマーチャント・バンカーがそれである。八0年代の白襟ストライプ入りのブルーのシャツ……」
ここから延々と、英国上流階級の様子が細かく語られるのですが。まあ、それはともかく。このシャツはたぶん見頃がブルーの縞柄なんでしょう。そこに、ホワイト・カラーが付いている。いいなあ。
とりあえず好みのシャツを着て。好みの本を探しに行くとしましょうか。