葡萄とカフス釦

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

葡萄は美味しいものですよね。
葡萄のひとつに、巨峰があります。あの巨峰が生まれたのは、昭和十年のことなんだそうですね。伊豆の大井上康という人が成功させた。
大井上康が見事な粒の葡萄を作りたい、そう思ったのは、大正八年のこと。それからは私財を投げうって、研究に研究を。
大井上家は篤農家だったのですが、昭和十年に巨峰が生まれた時には、すべて遣い果たしていたとか。
大井上康は毎朝毎日、栽培中の葡萄に、「世界一になれよ」と、声かけていたという。たしかに巨峰は世界一の葡萄でしょう。
明治三十八年。ナポリで葡萄を食べた日本人がいます。西暦でいえば、1905年のことですね。

「白い粉の下に細長く霞む薄皮の葡萄の粒、紫水晶の珠のやうな杏、青磁いろと代赭色の無花果の実。それらの味はさながら秋を噛みしめるやうだつた。」

有島武郎著『旅する心』には、そのように出ています。
これはナポリで泊まったホテルに近いレストランでの様子。イタリアで、レストランで、ということなら、たぶん葡萄酒も傾けたことでしょうね。
この有島武郎の旅は、弟とふたり。画家の、有島生馬と。『旅する心』には、有島生馬の絵が添えられています。
有島生馬の絵をみると、やや小型のアンフォーラが描かれています。アンフォーラ amphora は古代ギリシアでも使われていた容器のことですよね。1900年度のナポリでは、まだアンフォーラが現役だったのでしょうか。
また『旅する心』には土地のものうりに出会う話も。

「襟止め、指輪、カフス釦……」

これは貝や珊瑚を細工したアクセサリーなんですね。貝のカフ・リンクス、いいですね。
さて、お気に入りのカフス釦で。美味しい葡萄を食べるとしましょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone