ヒレ肉とエスパドリーユ

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ヒレ肉は美味しいものですね。ヒレ肉はいろんな料理に使われて。
たとえばとんかつ屋に入ったとしましょう。必ず「ヒレですか、ロースですか?」お訊かれることになっています。「ロースですか、ヒレですか?」とはあんまり言いませんね。ヒレのほうがエライからなんでしょうか。

「きみは知っているだろうか。オリーヴの枯枝で焙ったヒレくらいうまい焼肉は存在しないのだよ。」

伊丹十三著『ヨーロッパ退屈日記』の一節に、そんなふうに書いています。どうしてここに突然、「オリーヴの枯枝で焙ったヒレ」が出てくるのか。
1960年代。伊丹十三は夏の休暇を南仏で過ごしたんだそうです。で、昼間は、ペタンク。夜はハチハチ。その間、夕暮れともなると、オリーヴの枯枝を集めはじめる。ヒレ肉を焼くために。やがて枯枝に火がつくと、その上でヒレ肉を焼く。焼けた順から食べてゆく。たぶんオリーヴの樹の薫りもいっそうの美味しさとなるのでしょう。
ところで『ヨーロッパ退屈日記』は、ペタンクを紹介した、比較的はやい例でしょう。南仏起源の球戯ですね。
ペタンクはコショネにいちばん近づけた者が、勝ち。このコショネに近づけることを、「ポワンテ」というんだそうですね。フィリップ・ドレルム著『ビールの最初の一口』を読んでいて教えてもらったことなんですが。
『ビールの最初の一口』には、エスパドリーユの話も出てきます。

「エスパドリーユをはくと、地球を友達扱いするのにちょうどいいくらいに文明人になれる。」

と、書いています。エスパドリーユ、いいですね。軽くて、水にも強くて。
さて。エスパドリーユで、美味しいヒレ肉を食べに行きましょうか。

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