酒場とシャツ

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酒場はまあ、バアのことですよね。
町に222軒の酒場。これは多いのでしょうか、少ないのでしょうか。ついでながら町の人口、8万6千人だったそうですが。
人口、8万6千人。バアの軒数、222店。これはアメリカ、テキサス州ダラスの、1907年当時の様子なんですね。
ダラスの町の、エルム通りと、マーフィ通りの交差する角の二階建てに開店したのが「ニーマン・マーカス」。ほんとうは「ネイマン・マーカス」でしょうが、ここでは通例にならって「ニーマン・マーカス」といたしましょう。開店は、1907年9月10日のこと。
ハーバート・マーカスと、A・L・ネイマンとがはじめたので、その名前があります。資本金は、3万ドルだったと、伝えれています。
「ニーマン・マーカス」がはじめたのは、高級婦人服。この高級路線が当たって、10月のはじめにはほとんど商品を売り切ってしまったという。
以前、「ニーマン・マーカス」で有名だったのが、「クリスマス・カタログ」。特別注文の、水陸両用車が平気で並んでいるようなカタログだったから。
シャツ一枚贈るにも、「包み紙はいかがいたしましょう」、「リボンはいかがいたしましょう」。中には純金製のリボンをあったりして。品物より、はるかにリボンが高くなることもあったそうですね。
1907年は、日本の明治四十年ことで。この年に発表されたのが、『虞美人草』。もちろん、夏目漱石ですね。この中に。

「折目正しく着こなした背廣の地味な丈に、胸開の狭い胴衣から白い襯衣と白い襟が著しく上品に見える。」

これは「小野さん」の着こなし。「襯衣」には、「しやつ」のルビがふってあります。
なにか上品なシャツを着て、酒場に行きたいものですね。

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