菊と帽子

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菊は気品ある花ですよね。はるか遠い昔、中国から伝えられたんだそうです。そして今は日本の花という印象があります。
古い時代の宮中では、「菊合わせ」ということがあったらしい。二組に分かれまして、菊に因んだ和歌を詠む。で、その優劣を競ったんだそうです。
また、「菊の宴」とは。重陽の節句。旧暦の九月九日。菊の花を愛でながら酒を酌み交わしたんだそうです。
あるいは、「菊わた」。菊わたは、九月八日に、菊の花の上に綿をかぶせておく。で、九月九日になって。このかぶせておいた綿で顔を吹きますと。あーら、不思議。顔の艶が増したという。
菊が出てくる小説に、『失われた時を求めて』があります。もちろん、マルセル・プルーストの傑作。

「女は急いで家の前の小さな庭から咲き残った最後のキクを摘んで渡してくれた。」

菊を受け取ったのは、スワン。日本の菊がフランスに伝えられたのは、1862年のこと。そして1880年代には、菊が大流行になってのだそうです。マルセル・プルースト自身、菊がお好きだったようです。
プルーストは、ロール・エーマンに十五輪の菊を贈ったことがあります。1892年11月1日に。ロール・エーマンは当時有名だった、ドゥミ・モンディーヌ。
『失われた時を求めて』には、こんな一節も。

「パール・グレーの手袋や、「ジビュス」という折りたたみ式のシルクハットや……」

これはプレオーテの着こなし。「ジビュス」はオペラ・ハットのことですよね。パリの帽子屋、
アントワーヌ・ジビュスが考えたので、その名前があります。
さて、なにか帽子を被って、菊を見に行くとしましょうか。

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