ミル millier には、「千」の意味があるんだそうですね。
また、「ミル」という名の香水もあります。というより、この上なく高価な香水。フランスの「ジャン・パトゥ」の香水。発売当初は、翡翠の壺に入っていて。買ってくれた客には、ロールスロイスでお届けしたという。この場合の「千」にはたぶん、「無数の」といった意味が込められているのでしょう。「無数」の、花のエキスを集めての、香水。
「千語」を自らに課していた作家に、ジャック・ロンドンがいます。ジャック・ロンドンは毎日、自分に、千字書くことを義務にしていたんだそうですね。
アルファベットの国ではふつう、原稿量を文字数で数える。で、それを、千字。一方、日本では四百字詰め原稿用紙で、数える。千字は、原稿用紙で換算すれば、約六枚。ジャック・ロンドンは、毎日、原稿用紙六枚分の小説を書くことにしていたという。
ジャック・ロンドンの活躍期は、およそ二十年。二十年の間に、53冊の著書、200以上の短篇を遺しています。それも、一日六枚の、結果なのでしょう。ジャック・ロンドンの名作に、『火を熾す』があります。『火を熾す』は、「男」が、極寒の地で火を熾すという内容。火を熾せるのか、熾せないのか。それが生命の分かれ道でもあって。このなかに。
「ミトンの手袋や耳覆いや暖かい鹿革靴や暑い靴下によって……」
ミトン mitten は、二股式の手袋。また指先のない手袋のことを、「ミット」 mitt と呼ぶこともありますが。