オックスフォード・シューズ(oxford shoes)

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もっとも正統なる紳士靴

オックスフォード・シューズは、紐結び式の靴である。紐結び式であり、なおかつ内羽根式のものを、「オックスフォード・シューズ」と、総称する。
レースド・アップであり、クローズド・スタイルであるのだから、その種類はまことに多い。プレーン・トゥもあれば、ストレート・キャップもあり、フル・ブローグもあれば、セミ・ブローグも含まれるというわけである。

クローズド・スタイルの、レースド・アップということなら、誰しも「バルモラル・シューズ」を想起する。あのバルモラル・シューズもまた広くはオックスフォード・シューズのひとつなのである。ただし、時代の順番からいえば、オックスフォード・シューズの方が古い。

今のオックスフォード・シューズの原型は、1830年頃に生まれていたようである。「オクソニアン・シューズ」と呼ばれたもの。オクソニアン Oxonian はラテン語風の、やや古風な表現。「オックスフォード大学生」などの意味を持っている。おそらくは1830年頃、オックスフォード大学の学生が履きはじめたものであろう。
オクソニアン・シューズは、当時としては軽快な靴であって、外側の脇にスリットが斜めに入っていた。このスリット部分に、二、三の鳩目を用意して、ここに紐を通して結んだ。

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1840年代になって、この脇開きが甲の中央に移る。こうして現在のオックスフォード・シューズが生まれるのである。
余談ではあるが、鳩目もことを「アイレット」eyelet という。仮に鳩目が三つなら、「スリー・アイレッツ」ということになる。オックスフォード・シューズに関していえば、初期にはその数少なく、時代とともに増えていったのだ。

1869年『ザ・テイラー・アンド・カッター』誌三月号に、クリケット・ユニフォームが描かれている。ストライプのシャツに、ホワイト・フランネルズを合わせたスタイル。その足許には、オックスフォード・シューズが見えている。その鳩目の数は、「ファイブ・アイレッツ」であるように思われる。

1886年に、ジョージ・デュモーリエが描いた『ローン・テニス』の挿絵にも、オックスフォード・シューズが出ている。それは丸首のジャージー姿で、やはりホワイト・フランネルズ。そしてホワイト・フランネルズにはオックスフォード・シューズを履いているのだ。

1888年『ザ・テイラー・アンド・カッター』誌にも、テニス・ウエアが紹介されている。ストライプ柄のブレイザーに、ホワイト・フランネルズ。その足許には、ブラック&ホワイトのオックスフォード・シューズを合わせている。

おそらくは1880年代までのオックスフォード・シューズは、主としてスポーツ・シューズという印象があったのだろう。

1898年『ザ・ロンドン・テイラー』誌に、トップ・ハット、トップ・フロックの紳士の姿が描かれている。そしてその足許には、オックスフォード・シューズ。十九世紀末になって、オックスフォード・シューズはスポーツ・シューズからタウン・シューズへと、変身しはじめるのであろう。

「薄い鼠色のフランネルの夏服をきて、淡いトルコ石色の絹のシャツをつけ、はでな薄地のネクタイを結び、靴は鼠色のスウェードのオックスフォードをはいていた。」

1926年にヴァン・ダインが発表した『ベンスン殺人事件』の一節。これはリアンダー・ファイファーという洒落者の着こなし。少なくとも1926年頃には、オックスフォード・シューズが洒落者用となっていたことが窺えるであろう。

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