パリとバック

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パリは、誰にとっても憧れの街ですよね。ある皮肉な英國人が言ったものです。
「フランス人のいない巴里があったら、好きだ。」
まあ、そんな意見があるのかも知れませんが。
パリからはじまるミステリに、『深夜プラス1』が、あります。英国人作家、ギャヴィン・ライアルが、1965年に発表した物語。

「パリは四月である。雨もひと月ほど前ほど冷たくはない。といって、たかがファッション・ショーを見るために濡れて行くには寒すぎる。」

これが、『深夜プラス1』の、第一行。主人公のイギリス人、ルイス・ケインはサン・ジェルマン・デ・プレに居て、「カフェ・ドゥ・マゴ」で、一杯傾けている。
ギャヴィン・ライアルのミステリで、『深夜プラス1』ほど、多くの影響を与えた小説はないでしょう。たとえば、『深夜プラス1』を読んで感動した内藤 陳は、同好の士が集まれるバアを開いた。バアの名前はもちろん、「深夜プラス1」。「深夜プラス1」は、今も健在のようですが。
ギャヴィン・ライアルが1996年に発表したのが、『誇りへの決別』。『誇りへの決別』は、1913年のトリエステで幕が開きます。トリエステの「カフェ・サン・マルコ」で、ふたりの紳士が話している。キオジア伯爵と、ファルコーネ上院議員。

「あれは生地がぴったり背中に垂れるように裁断するのに、大変な熟練が要るんだ。」

これは、ファルコーネが、キオジア伯爵に対しての科白。「あれ」とは、フロック・コート。フロック・コートのバック・スタイルを作るのは至難の技だと話しているわけです。
でも、バック・スタイルが難しいのは、スーツも同じことでしょう。バック・スタイルが美しいカーヴを描いたスーツを着て、パリに行きたいものではありませんか。

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