推理小説とステッチ

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推理小説という読物がありますよね。推理小説よりも前には、「探偵小説」とも言ったようですが。今はむしろ、「ミステリ」でしょうか。
ミステリでも、推理小説でも、探偵小説でも、お好きに考えてくださって結構です。探偵小説はアメリカ生まれという説があります。エドガー・アラン・ポオが探偵小説の生みの親であろう、と。でも、どこ産の推理小説がよろしいかと申しますと。「イギリス産!」の声が高いようですね。
英国の推理作家に、ジョン・クリーシーがいます。ジョン・クリーシーの代表作としては、『
ギデオン警視の一週間』があります。
ジョン・クリーシーは本名で、多くの筆名をも持っていたらしい。それはともかくジョン・クリーシーはざっと四十年の間に、五百冊の推理小説を書いた人なんだそうですね。つまり毎月一冊は書いた計算になります。
では、ジョン・クリーシーはどんな風にしてミステリを書いたのか。ジョン・クリーシーは作家への助言としてこんなことを言っています。

① 考えこまないで、とりあえず書きはじめる。
②尊大に構えるべからず。
③趣味は、多く。ただし、凝りすぎないこと。
④机上の整理整頓。

…………と、はじまって十五章に注意点が並べられているのですが。私の場合、この④の章あたで、俯いてしまいます。「机上の整理整頓」。なるほどねえ。反省しきりであります。
このジョン・クリーシーの説に従うと、私の尊敬してやまないレイモンド・チャンドラーの机上も整理整頓されていたのでしょう。
レイモンド・チャンドラーが、1936年に発表したミステリに、『犬が好きだった男』があります。この中に。

「重ね縫いのパッチ・ポケットがついた淡黄色のフランネルの背広を着ていたが………………」。

これは警察署長の、フルワイルダーの服装を、私立探偵のマーロウが眺めている場面。
ひとつの想像ですが。ダブル・ステッチなのでしょうか。アメリカ風にいえば「スポーツ・コート」で、パッチ・ポケットになっていて。そこにダブルのステッチが入っているとか。
まあ、これだってちょっとした「推理小説」かも知れませんが。

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