洋服と楊柳

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洋服は、西洋の服装のことですよね。西洋服を短くして、洋服。
これは、「洋食」に似ているのかも知れません。「西洋料理」があって、「洋食」があるように。たぶん、明治期には「西洋料理」が多く使われたのでしょう。それが時代とともに「洋食」が殖えていったのではないでしょうか。
洋食はさておき、「洋服」はいつ頃からの日本語なのか。「西洋服」とはどう違うのか。まあ、どうでもいいことではありますが。
明治二年には「西洋服」の言い方、すでにあったらしい。でも「洋服」は未だ使われてはいません。つまり「洋服」より「西洋服」のほうが、微妙に、古い。
明治四年五月の、『新聞雑誌』の記事に。

「洋服屋繁盛」

と出ています。私が見た中ではもっとも古い「洋服」です。これは洋服屋が繁盛して、駕籠屋が廃れたとの記事なのです。
ところが。同じ『新聞雑誌』二号には、「衣服、穿物の種類」の見出しがあって。

「軍服、非常服、西洋服………………」

と出ています。要するに、明治四年五月には、「西洋服」もあり「洋服」あった、そう考えてよいでしょう。ここから大胆に推理するなら、明治四年五月は、「西洋服」から「洋服」への移行期だったのかも知れませんね。
洋服が出てくる小説に、『大地』があります。パール・バックの長篇。1920年代の中国が背景に描かれる大長篇。

「こうして、とうとう淵も最新流行の洋服着ることになった。」

それまでの中国服を脱いで、「洋服」を着る場面です。また、『大地』には、こんな描写も出てきます。

「楊柳が縁どる池の中に白い鵞鳥が浮かんでいるような絵だった。」

「楊柳」が、柳のことであるのはいうまでもないでしょう。けれども、その一方で、生地の名前でもあります。ごく簡単に言って、クレープのこと。表面に細か縦皺をあしらった生地のことです。夏には最適の素材とされます。
楊柳のシャツを着て、理想の洋服を探しに行くとしましょうか。

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