プールポアンとプレエヌ

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プールポアンは、刺子胴着のことですよね。プールポアンは、服飾史には必ず出てくる言葉です。p o urp int と書いて、「プールポアン」と訓みます。言葉通りに日本語にすれば、「縫うために」でしょうか。ただ、実際には「綿入胴着」のこと。
プールポアンを説明するには、「コット・ド・メイユ」を知っておくべきでしょう。コット・ド・メイユは、「鎖帷子」のことです。
中世の「鎧下」。その時代の戦は主に剣や槍での闘い。そこで剣や槍を防ぐために、鎖帷子を着た。これが、コット・ド・メイユであります。
ただ直接に鎖帷子を着ると、冷たい、痛い。そこで、下に重ねたのが、刺子。プールポアンなのです。時代が変ってからも、プールポアンはひとつのモオドとして生き延びたのであります。
プールポアンが出てくる小説に、『艶笑滑稽譚』があります。1832年に、バルザックが発表した物語。『艶笑滑稽譚』は、徹底した擬古文で書かれています。だいたいルイ十一世の時代の話ですから、古いのも当たり前なのでしょうが。オノレ・ド・バルザックとしては、古い時代の話という名目で、むしろ古い時代の言葉を駆使してみたかったのでしょう。

そしてプールポアンを貫く浅からざる傷を身に負うて居た此の二人の者は…………………。

バルザックはそんなふうに書いています。
では、十九世紀に生きたバルザック自身は、どんな恰好だったのか。

「四十五フランのフォーマル黒ズボン一本、十五フランのキルティングした白チョッキ一着、一二〇フランのルヴィエのブロードクロスの青いフロックコート一着………………。」

当時、巴里で最高級と謳われた「ビュイッソン」で、それら一式を註文したのです。
「キルティングした白チョッキ」は、十九世紀版のプールポアンでもあったでしょう。
さて、もう一度『艶笑滑稽譚』に戻りましょう。

「聖遺物匣の如く金色に光輝くプーレーヌを、ぽーんと遠くに脱ぎ捨てると………………」。

ここでの「プーレーヌ」は、プレエヌ p o u l a in e のことかと、思われます。プレエヌは、極端に爪先が長く尖った短靴のこと。
プールレエヌは、あまりにも爪先が長いので、糸で爪先を吊りあげておいたり、先端に小さな鈴をつけたりも。十三世紀のヨオロッパで大流行になったものです。
プレエヌにも、プールポアンにも縁はありませんが。もう少し歴史を学ばなくてはと、反省しきりです。

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