是也とコート・ドレス

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是也で、演出家でといえば、千田是也でしょうか。今、千田是也は、と説明するよりも。女優の中川安奈のおじいちゃんといったほうが分かりやすいかも知れませんが。
千田是也は、藝名。本名は、伊藤圀夫。今もある「俳優座」の創立者であります。
俳優座は、昭和十九年二月の創立。千田是也の語りかけで、小沢栄太郎や東野英治郎、東山千栄子など十人の役者の団体としてはじまったもの。
ところで、伊藤圀夫の藝名、「千田是也」をなんと訓むのか。ふつうは、「せんだ これや」でしょう。が、ご本人は「せんだ これなり」と思っていたふしがあります。
あるいはまた、「せんだ これあ」が正しいとの説もあるようですね。
千田是也の実のお兄さんが、伊藤道郎。伊藤道郎は、本名。建築家、伊藤為吉の長男。伊藤為吉は「服部時計店」や「博品館」を設計した建築家。
伊藤道郎はおそるべき美男子で、ルドルフ・ヴァレンティーノが顔青くするくらいのハンサムでありました。結局は建築家にはならず、舞踏家になった人物であります。

「昔海軍大将の着たような金モールのついた大禮服を着た人が火を口から吹くのを毎日見ていた。」

伊藤道郎著『世界に踊る』に、そのように書いています。少年の頃の想い出として。
伊藤道郎は、明治二十六年四月十四日の生まれですから、明治後半のことでもありましょうか。まだ「大禮服」が身近かにあった時代だと思われます。
大礼服は、「コート・ドレス」 c o urt dr ess のことです。フロック・コートの全体に、金糸の刺繍を施した正装といえば良いでしょうか。
正装にも「上には上がある」ことを弁えておく点でもコート・ドレスは必要でしょうね。

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