伯爵とハット

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伯爵は、カウントのことですよね。貴族の中のひとつ。
まず、お偉順に公爵があって。次に、侯爵。侯爵の次に、伯爵。伯爵の次に、子爵。
子爵の次に、男爵。さらには、準男爵というのもあるんだそうですが。
題に、「伯爵」がつく短篇小説に、『伯爵と結婚式の客』があります。1900年頃に、
O・ヘンリーが発表した物語。

「イタリアに領地とお城を持っていて、名前はフェルナンド・マッツィーニ伯爵というんです。」

O・ヘンリーが短篇の名手であるのは、申しまでもありません。その中でも、いわゆる
「ニュウヨーク物」と呼ばれる作品に優れたものが多いのも、特徴のひとつでしょう。
O・ヘンリーが単身、ニュウヨークを目指したのは、1902年の春のこと。
O・ヘンリー、四十歳の時のこと。
それで、O・ヘンリーは、1904年に、六十六篇の物語を書いています。O・ヘンリーがいかにニュウヨークの巷を歩き、人に会い、人を観察し、人と語ったかが、想像できるでしょう。
O・ヘンリーがニュウヨークで住んだのは、ユニオン・スクエア。アーヴィング・プレイスの五十五番地でありました。このアーヴィング・プレイスは、かのワシントン・アーヴィングに因んでの名称でもあったのです。
O・ヘンリーの短篇の中でもことによく知られているものに、『賢者の贈物』があります。
原題は、『ザ・ギフト・オブ・ザ・メイジャイ』。メイジャイM ag i は、聖書に出てくる聖者。「東方の三博士」のこと。クリスマスのことですから、ちょうどよかったのでしょう。
O・ヘンリーは『賢者の贈物』を、「ピーツ・タバーン」で書いたと伝えられています。今もニュウヨークにある酒場。なぜなら、O・ヘンリーの住まいの斜め前の店だったから。

伯爵が出てくるミステリに、『運命のコイン』があります。2018年に、ジェフリー・アーチャーが発表した物語。

「エレーナが感激したことに、伯爵夫人からわざわざ肉筆でお茶の招待状が届き、それは同時に、彼女の新しいアパートを見せてもらえるということでもあった。」

エレーナは、主人公、アレクサンドルのお母さんという設定になっています。
また、『運命のコイン』には、こんな描写も出てきます。

「まづ気づいたのは、多くの男性がハットをかぶっていることだった。フラット・キャップ、ホンブルグ帽、山高帽。」

この時代背景は、1968年。エレーナとアレクサンドルがはじめてロンドンに着いた時の印象として。
1960年代までのロンドンでは、「紳士は帽子をかぶるもの」との一般常識があったようですね。
英國、チャールズ二世の時代に。ウイリアム・ペンと、チャールズ二世とが会ったことがあるらしい。
ウイリアム・ペンは国王の前で、ハットを脱がなかった。と、チャールズ二世が帽子を取った。「国王、どうして帽子をお脱ぎになるのですか?」と、ウイリアム・ペンが訊いた。これに対するチャールズ二世の返事。

「なあに、国王の居る所で帽子をかぶってよいのは、ひとりだけだからね。」

どなたかこれくらい粋な科白が出てくる帽子を作って頂けませんでしょうか。

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