パブロとハイヒール

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パブロは、男の子の名前ですよね。パブロ・ピカソだとか。
どちらかといえば、スペインに多い名前でしょうか。アメリカなら、ポオルに近いかも知れませんが。
日本なら、「透」にも似ているでしょう。とにかくスペインではそれほど珍しい名前ではないようです。
パブロ・ピカソの外にも、パブロ・カザルスがいます。さらには詩人の、パブロ・ネルーダも加えておくべきでしょう。
そして、もうひとり忘れてならないのが、パブロ・デ・サラサーテ。パブロ・デ・サラサーテは、「十九世紀最高のヴァイオリニスト」と称されたお方であります。
パブロ・デ・サラサーテは、1844年3月10日。スペインの、パンプローナに生まれています。
サラサーテは八歳でヴァイオリンの公演会を開いたと伝えられています。
1854年に。マドリッドの宮廷に招かれて、ヴァイオリンの独創。これをお聴きになったのが、当時のイサベラ女王。
イサベラ女王は、サラサーテに贈物を。それは1724年製の、ストラディヴァリウスであったという。
サラサーテは終生、このストラディヴァリウスを愛用したとのことです。そしてもう一挺のヴァイオリンは、1713年製のストラディヴァリウスだったそうですが。
イサベラ女王はサラサーテを援助して。18561月1日。「巴里音楽院」に、入学しています。サラサーテ、十一歳の時であります。
サラサーテは、デルファン・アラールについて学び、ソルフェージュ科とヴァイオリン科とで、一等賞を受けたとのことです。
サラサーテの超絶技巧はよく言われることですが。実はサラサーテの指は決して長くはなかった。それをサラサーテは練習と技法とで補ったと考えられています。
サラサーテの趣味は、ステッキ蒐め。世界中の王侯貴族からのステッキを蒐集していたそうです。もしフロイトならサラサーテの指とステッキについて何か語ったかも知れませんが。
サラサーテがお好きだった作家に、ヘッセがいます。ヘルマン・ヘッセ。

「彼は、あなた方の恍惚とした気持ちとは関係なしに、限りなく丁寧にそして芸術家としての愛情を込めて、弓を動かしているのです。」

ヘルマン・ヘッセが、1899年に書いた『サラサーテ』に、そのように出ています。文中、「彼」とあるのが、サラサーテであるのは言うまでもないでしょう。
日本でのサラサーテ愛好家といえば、内田百閒でしょうか。

「それはサラサーテの聲に違ひないと思はれるので、レコードとしては出來そこなひかも知れないが、さう云ふ意味で却つて貴重なものと云はれる。」

昭和二十三年に、内田百閒が発表した『サラサーテの盤』の一節に、そのように出ています。
これは主人公が持っているサラサーテのレコード盤が見当たらない話が中心になっているのですが。
結局、その「サラサーテの盤」が友人から戻ってきて。主人公がそのレコード盤に針を落とすところで、物語は終っています。内田百閒ならではの不思議な小説と言ってよいでしょう。
それはともかく、この「サラサーテの盤」には、実際にサラサーテの話し声が入っていたのですが。

「………一九七三年に、パブロと名のつく三人の男が相次いでこの世を去ったわけですね。」

1974年に、五木寛之は、『三人のパブロ』と題する随筆を、このように書きはじめています。
五木寛之は小説はもとより、随筆に於いても、その視線がユニイクですね。凡人が見落としているところに、鋭い焦点を当てることがあります。

「………踵は当時としてはやや控え目ではあるが、それなりに流行を反映して高い。保守的でありながかつ柔軟さも感じさせる品のいい靴である。」

1993年に、五木寛之は『あの靴この靴、日が暮れて』の題の随筆に、そのように書いています。
時は1968年の夏。場所はパリ。「フランソワ・ヴィヨン」の店で。
「フランソワ・ヴィヨン」は、高級靴の専門店。もともとはオオトクチュール相手の靴職人、フランソワ・ヴィヨンがはじめた店なのです。
あのシャネルのベージュのキッドに黒のヴェルヴェットを組み合わせた靴を作った張本人といえば、お分かりでしょうが。
結局、五木寛之は、「モンマルトルの丘から飛び降りるつもりで」、このハイヒールの靴を買う話になっています。
1968年にはビートルズの影響もあって、ハイヒールの靴が流行ったものですね。
男物のハイヒールの本家本元は、カウボーイ・ブーツ。カウボーイの穿くブーツはまず例外なくハイヒールになっています。
あのカウボーイのハイヒールは実は機能からはじまったもの。たとえば、馬が暴走した時などには、ロープの輪を踵で踏み付けるために。
昔のカウボーイは、いざという用心のために、綱の一方の端は、輪に拵えていたんだそうですね。
どなたかハイヒールが上品に見える靴を作って頂けませんでしょうか。

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