フレンチは、フランスのことですよね。もちろん、Fr ench と書く英語であります。
辞書を開いてみるとすぐに分かることですが。「フレンチ」とつく言葉がたくさん並んでいます。
私たちに身近なフレンチに、「フレンチ・トースト」があります。卵をミルクに溶いて、ここにしばらくつけておいて。それをバターたっぷりのフライパンで炒めると、フレンチ・トーストの完成であります。
フレンチ・トーストはまことに美味しいものです。また、ふわふわの舌ざわりがよろしいではありませんか。
「幸福そのものだ、と思う食べ物に、フレンチトーストがある。」
江國香織は、『フレンチトースト』と題する随筆のを、そのように書きはじめています。
そこから延々と「フレンチトースト」について語って。おしまいの文章は、次のようになっているのです。
「フレンチトーストが幸福なのは、それが朝食のための食べ物であり、朝食を共にするほど親しい、大切な人としか食べないものだから、なのだろう。」
そんなふうに結んでいます。
さあ、幸福のために、美味しいフレンチ・トーストをたくさん頂きましょう。
もともとのフレンチ・トーストは、少し固くなったパンを使ったらしい。ことにフランス・パンは、もう少し長ければ、野球のバットに使いたいほど固くなることが。
つまり、フレンチ・トーストには「敗者復活」の意味もあったのでしょう。固いパンをフレンチ・トーストにすることで、蘇らせるわけですから。
イギリス人から見てのフランス人は、節約家という印象があって。それで「フレンチ・トースト」の呼び方が生まれたのでしょう。
もっともフランス人から見てのイギリス人は、偽善家の想いがあるらしく。フランスにも、
「………アングレ」の表現も多くあるのですが。歴史を含めて、イギリスとフランスは近くて遠い国ですから、お互いに意識せざるを得ない間柄なのでしょう。
フランス人の書いた小説に、『人喰い鬼のお愉しみ』があります。
ダニエル・ぺナックが、1985年に発表した物語。この中に。
「気がついた? ズボンの前のチャックが開いてたよ!」
これは病人を運んできた救急隊員の科白として。
今、トラウザーズの前開きにはたいていファスナーが使われます。戦前には、まず例外なくボタンだったものです。
昔の人はジッパーをそれほど信頼していなかったから。ジッパー、ファスナー、チャック。
フランスではこれを、「フェルメトゥール」f erm et ur e 。
女性のドレスにはじめて、「フェルメトゥール」を用いたのは、スキャパレリ。イタリア生まれで、巴里で活躍したデザイナー、エルサ・スキャパレリ。1930年代のことです。