プディングとファブリック

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プディングは、プリンのことですよね。そんなふうに決めつけて良いのかどうか。でも、日本語に「プリン」があるのは、間違いないでしょう。
「プディング」は食事のひとつという印象があります。一方、「プリン」は菓子を想わせることが多いのではないでしょうか。
イギリスでの言いまわしに、「プディングの味は食べてみないと分からない」というのがあるんだそうですね。「ザ・プルーフ・オブザ・プディング・イズ・イン・ザ・イーティング」。
日本語での「論より証拠」にも近いかも知れませんが。

「兄さん、其プツヂングを妾に頂戴。ね、好いでせう」とお重が兄に云つた。」

夏目漱石が、大正二年に発表した『行人』に、そんな会話が出てきます。漱石はこの小説の中で、「プツヂング」と書いています。たぶん、プディングのことなんでしょうね。そして、この場合の「プツヂング」は、菓子のほうではなかったかと思われます。

「ほんとう?………」妻はそうかと云って振り向いて見るわけにもいかず、プディングを匙であぶなかしそうにすくいながら云った。」

昭和十五年に、堀 辰雄が発表した『晩夏』に、そのような描写が出てきます。場所は、軽井沢あたりに設定されているのですが。また、『晩夏』には、こんな文章も出てくるのです。

「………半ズボンに白いポロシャツという服装で、頭おとこののように刈り上げた、目鼻立ちのきりっとした美しい娘で……………。」

この『晩夏』での「妻」は、この少女を見るために振り向こうとしたのですが。
昭和十五年ということは、昭和十四年の執筆なのでしょうか。昭和十四年は、西暦の1939年のことで。1939年の軽井沢には、「白いポロシャツ」があったものと思われます。
えーと。たしかプディングの話でしたね。プディングが出てくる小説に、『大いなる遺産』があります。1861年に、英国の文豪、ディケンズが発表した長篇。ディケンズの名作でもあり、傑作でもあります。

「………もしジョーがそのことを知ったら、昨日の肉やプディングが今日の食卓に出てきて……………。」

ディケンズの時代は、夕食にはまずプディングが出て、それから食事が続けられたんだそうですね。
また、『大いなる遺産』には、こんな描写も出てきます。

「ミスター・トラップの助言を得て、ぼくはスーツの服地を選んでしまうと、もう一度寸法をとりに居間へ入った。」

もちろん物語の主人公、「ピップ」が服を仕立ててもらう場面。「ミスター・トラップ」は、洋服屋という設定になっています。

「………巻いた服地を一本下ろしてきて、艶が目立って見えるようにと、あらかじめ手を下にあてがいながら……………。」

これも、「ミスター・トラップ」の様子。生地はたいてい表を内側にして巻いてあるので。
ここでの「服地」は、ファブリックでしょうか。
どなたか光沢ある細番手で、スーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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