知恵は、頭の巡りの良さですよね。英語なら、ワイズダムでしょうか。
俗に、「知恵がつく」なんていうではありませんか。
昔の風習に、「知恵の粥」というのがあったんだそうですね。旧暦の11月23日に、「知恵の粥」を食べる行事。なんのことはない、小豆の粥なんですが。これをば枯れ柴の箸で頂きますと、血の巡りがよくなると信じられていたらしい。
「知恵」と題につく本に、『知恵の七柱』があります。イギリスの、トオマス・エドワード・ロレンスが、1922年に完成させた記録文学。原題もまた『セヴン・ピラーズ・オブ・ワイズダム』となっています。
『知恵の七柱』は、『旧約聖書』の一章から得た題名のようです。この著者である、ロレンスが、かの「アラビアのロレンス」のモデルになった人物であるのは、言うまでもないでしょう。
『知恵の七柱』は、大長篇。その多くは1910年代のアラビアが背景になっています。
ロレンスはもともと考古学者だったのですが。1914年に第一次大戦がはじまって、英國軍人となった人物。そのあたりは映画の『アラビアのロレンス』にも詳しいところでしょう。
ロレンス著『知恵の七柱』は、いわば映画『アラビアのロレンス』の原作と言えるのかも知れません。
『知恵の七柱』を読んでおりますと、当時のアラビアでの服装描写がたくさん出てきます。
「羊皮の上衣は手に入る限りの最高のアンゴラのもので、緑色のブロードの表をつけ、絹のパッチと褐色の組紐文様の飾りがついている。ほかの衣類も絹物で……………。」
これはほんの一例ですが、アラビアの人たちの服装はシルクが多かったようですね。
ここでの「アンゴラ」ang or a は、「アンゴラ山羊」の毛かと思われます。同じアンゴラでも、「アンゴラ兎」の毛も用いられることがあるのですが。
なにがなんだか分からなくなったら、辞書をひくのが、早いでしょう。
英國でもっとも古い英語辞書に、『ジョンソン英語辞典』があります。1755年の完成。
かのサミュエル・ジョンソンがひとりで編んだので、その名前があります。
『ジョンソン英語辞典』で、誰もが知っている話がふたつありますよね。ひとつは「カラス麦」の説明。「イングランドでは馬に与え、スコットランドでは人に与える穀物」。
もうひとつは、チェスターフィールド卿の話。
ジョンソン博士が辞書編纂の協力を、チェスターフィールド卿に申し出たところ、断られたとの話。
「………ヂョンスン自身、この話は全然根も葉も無いことであることを私に確言した。」
ボズウェル著『サミュエル・ヂョンスン伝』には、そのように書いてあります。ジョンソン博士は一連の噂を否定したんですね。
今、英語辞典で「ボズウェルライズ」をひいてみると、「最大もらさず記録すること」と出ています。もちろん、著者のジェイムズ・ボズウェルの名前から出ているわけです。
チェスターフィールドが外套の名前にもあることは、申すまでもありません。チェスターフィールド・コートのなによりの特徴は、前身の比翼仕立て。前ボタンを隠すことによって、正装感を高めたものです。
そしてもうひとつの特徴が、タイト・フィット。ウエストではっきりと細く仕上げたシルエット。
どなたか完全なるチェスターフィールド・コートを仕立てて頂けませんでしょうか。